ゴールデンウィークが明け、新入社員の受け入れも一段落した5月後半。「ようやく一息」と感じる経営者・人事労務担当者の方も多いかもしれません。しかし社労士の立場から申し上げると、5月後半は「6月以降の繁忙期を乗り切れるかどうか」を決める最後の仕込み期間です。住民税通知書の処理、労働保険年度更新の準備、新たに始まった子ども・子育て支援金の徴収――いずれも、いま動くか動かないかで6月以降の業務負荷が大きく変わります。
さらに2026年10月には、カスタマーハラスメント対策の義務化と社会保険適用拡大(106万円の壁撤廃)など、 中小企業の経営判断を伴う重大な法改正が控えています。本記事では、従業員5〜100名規模の中小企業に向けて、いま着手すべき実務と、秋までに準備すべき法改正対応を社労士の視点で整理してお届けします。
1⃣ 住民税特別徴収税額決定通知書の処理(5月下旬受領)
5月中旬〜下旬にかけて、各市区町村から「住民税特別徴収税額決定通知書」が会社に届きます。6月給与から翌年5月給与までの毎月の天引き額を確定させる、極めて重要な書類です。
≪中小企業で頻発する3つのミス≫
≪5月後半のTODO≫
2⃣ 子ども・子育て支援金の初回徴収(5月給与から)
令和8年4月から開始された子ども・子育て支援金制度。医療保険料に上乗せして徴収される新たな仕組みで、4月分保険料を5月支給給与から徴収・納付します。新制度のため、給与明細を見た従業員から問い合わせが必ず発生します。以下の3点を5月後半のうちに準備しましょう。
3⃣ 労働保険年度更新の準備(申告期間:6月1日〜7月10日)
中小企業の人事労務担当者にとって、1年で最も負荷の高い業務の一つが労働保険年度更新です。6月1日に申告書が送付され、7月10日までに申告・納付を完了させる必要があります。
≪5月後半のうちに完了させたい準備≫
5月のうちに賃金集計を終わらせておけば、6月以降の業務が劇的に楽になります。毎年6月後半に慌てる会社は、この5月後半の準備で差がついています。
4⃣ 算定基礎届・夏季賞与の支給準備
7月1日〜10日に提出する算定基礎届は、4月・5月・6月支給給与をベースに標準報酬月額を決定する重要な手続きです。5月後半は4月支給給与の確定確認と、5月支給給与の正確性チェックを行いましょう。
夏季賞与については、各シンクタンクの2026年夏季賞与予測は前年比+2.2〜2.5%(出典:第一ライフ資産運用経済研究所「2026年・夏のボーナス予測」)。賞与支払届(支給後5日以内)の提出忘れにも要注意です。
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⚠️ 注意喚起:障害者雇用納付金の申告(5月15日期限)― 未対応の方へ
常用労働者100人超の事業主は、令和8年4月1日〜5月15日までに障害者雇用納付金・調整金の申告・納付が必要でした。
もし申告が未完了であれば、延滞金(年14.6%)が発生する可能性があります。法定雇用率(民間2.5%、令和8年7月から2.7%に引上げ)を下回る場合、不足1人当たり月額5万円の納付金が課されます。
「カウント方法に自信がない」「対象者数が直前で変動した」「申告漏れに気づいた」という場合は、至急、社労士までご相談ください。期限を過ぎていても、誠実な対応で影響を最小化できるケースが多々あります。
1⃣ 試用期間の管理 ― 「気づいたら本採用」を防ぐ
4月入社の正社員は、多くの企業で3〜6か月の試用期間が設定されています。社労士相談で最も多いトラブルの一つが、試用期間運用の不備です。
【判例で確立された原則】
試用期間中の本採用拒否は、通常解雇よりは緩やかに認められますが、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です(三菱樹脂事件・最大判昭和48年)。「なんとなく合わない」では本採用拒否は認められません。
≪5月後半にやるべきこと≫
2⃣ 5月病・メンタルヘルスケアの初動
GW明けは、新入社員だけでなく既存社員にも5月病の兆候が出やすい時期です。マイナビが正社員約2万人を対象に実施した調査では、18.5%が「五月病になったことがある」と回答しており、特に20代(21.7%)・30代(24.0%)の若手〜中堅層で割合が高くなっています。さらに同調査では、五月病経験者の約4割が「転職を考えたことがある」と答えており、放置すれば離職にもつながりかねないテーマです(マイナビ調査2026)。
中小企業では産業医や保健師が常駐していないケースが多く、初動が遅れがちです。以下の3点を5月後半のうちに着手しましょう。
ここからは、5月のうちに方針検討に着手しないと10月施行に間に合わない重要な法改正をお伝えします。
🔴 【2026年10月施行】カスタマーハラスメント対策の義務化
2025年6月に労働施策総合推進法が改正され、2026年10月1日からカスハラ対策と就活ハラスメント対策が、すべての事業主の義務となります(厚生労働省)。
≪企業が講ずべき措置(パワハラ防止措置と同様の枠組み)≫
なお、方針の明確化は就業規則の改定が法的に必須というわけではなく、社内規程・社内報・パンフレット・対応マニュアル等をいずれかまたは組み合わせて活用することで対応可能です。ただし、「相談を理由とする不利益取扱いの禁止」など労働条件に関わる規定については、就業規則に盛り込むのが実務上整合的です。すでにパワハラ防止規程を整備済みの企業は、これにカスハラ条項を追加する形での改定が最も現実的な選択肢となるでしょう。
≪中小企業ほど準備が遅れがちな3つの理由≫
法律で「措置義務」とされている以上、未対応で問題が発生した場合、企業の責任が問われます。施行まで残り約5か月、規程整備・体制構築には最低でも3〜4か月は要するため、今すぐ動き出すべきタイミングです。
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🔵 【2026年10月施行】社会保険適用拡大(106万円の壁撤廃)
年金制度改正法により、月額賃金8.8万円(年収106万円)の要件が撤廃され、週20時間以上勤務するパート・アルバイトは、賃金額にかかわらず社会保険加入対象となります(厚生労働省)。
≪中小企業への影響と5月後半に着手すべきこと≫
10月施行とはいえ、対象従業員への説明や賃金体系の見直しには時間がかかります。
💡【参考】令和8年度の雇用関連助成金
令和8年度は、キャリアアップ助成金(非正規の正社員化)、両立支援等助成金(育児・介護両立支援)、人材開発支援助成金(リスキリング)などが拡充されています。中小企業で活用可能なものも多くありますので、興味のある制度は厚生労働省のホームページで詳細をご確認ください。
まとめ ― 5月後半の動き出しが、秋の経営を左右する
5月後半は「定例実務の仕込み」と「下半期の法改正準備」が同時並行で動く、人事労務の重要な分岐点です。特に2026年10月のカスタマーハラスメント対策義務化は、中小企業の多くが「何から手をつければよいかわからない」という状態にあります。施行まで残り約5か月。就業規則改定、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備、管理職研修――やるべきことは想像以上に多いのが実情です。「うちの規模で何が必要か」「規程のひな型はどう作るか」「相談窓口は外部委託すべきか」――こうした疑問がある場合は、ぜひお早めにご相談ください。
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2026年10月の義務化施行まで、残り約5か月。当事務所では、中小企業向けのカスタマーハラスメント対策パッケージをご提供しています。
≪支援メニュー≫
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参考サイト
こども家庭庁:「子ども・子育て支援金制度について」
第一ライフ資産運用経済研究所:「2026年・夏のボーナス予測」
全国労働基準関係団体連合会:「三菱樹脂本採用拒否事件」
マイナビ:「【正社員2万人に聞いた】ゴールデンウィーク休暇と五月病に関する調査2026年」
厚生労働省:「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」
厚生労働省:「社会保険の加入対象の拡大について」
厚生労働省:「雇用関係助成金一覧」