作成日:2024/11/27
標準報酬月額と定時決定、随時改定の仕組み
目次 1. はじめに 2. 標準報酬月額とは? 3. 定時決定とは? 4. 随時改定とは? 5. おわりに |
はじめに
社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、保険料徴収や保険給付などの場面において、標準報酬月額を基準として計算や管理がなされています。この仕組みは社会保険特有で、所得税や住民税、労働保険などとも異なっています。やや複雑であるため、制度の誤解や手続きの間違いが起こることもあります。今回のブログでは、社会保険の標準報酬月額、定時決定、随時改定の仕組みについて解説します。
「標準報酬月額」(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)とは、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を、区切りのよい幅で区分した報酬月額に当てはめて決定したものです。健康保険では、第1級の58,000円から第50級の139万円までに区分され、厚生年金では、1等級の8万8千円から32等級の65万円までに区分されています。この標準報酬月額に基づき、保険料の額や保険給付の額を計算します。
例えば、標準報酬月額が「240,000円」である従業員(介護保険第2号被保険者に該当しない)の場合、表1より、健康保険料は11,820円、厚生年金保険料は21,960円が被保険者負担額となります。
標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、役職手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。
事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、厚生労働大臣はこの届出内容に基づき、毎年1回、標準報酬月額を決定し直します。これを「定時決定」といいます。決定し直された標準報酬月額は、その年の9月から、翌年8月までの各月に適用されます。
<提出対象者>
算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在のすべての被保険者および70歳以上被用者です。ただし、以下の(1)〜(4)のいずれかに該当する方は、算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
(4)8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った方
また、通常定められた方法によって報酬月額を算定することが困難な場合や著しく不当である場合、厚生労働大臣が報酬月額を算定し標準報酬月額を決定します。これを保険者決定といいます。
上記の通り、標準報酬月額は、年1回の定時決定により見直しが行われます。しかし、被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを「随時改定」といいます。随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
(1) 昇給または降給等により
固定的賃金に変動があった。
<「固定的賃金の変動」の例>
・昇給、降給
・給与体系の変更(時給から月給への変更等)
・日給や時間給の基礎単価の変更
・固定的な手当の追加、変更
(2) 変動月からの3カ月間に支給された報酬(
残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
上記(1)から(3)すべての要件を満たした場合、「月額変更届」により届出します。変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定されます。
なお、標準報酬月額等級表(先ほどの表1)の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の差がなくても、随時改定の対象となります。
表2 2等級以上の差がなくても随時改定の対象となる場合(厚生年金保険)
表3 2等級以上の差がなくても随時改定の対象となる場合(健康保険)
今回は、標準報酬月額と定時決定、随時改定について取り上げました。やや複雑な仕組みではありますが、正しく理解し、適切なタイミングで手続きを行うことが大切です。手続きを誤った場合、本来支払うべき社会保険料額からの不足・過剰などが発生し、従業員に不利益を与える可能性もあります。また、手続きを怠っていると、法令違反として処罰の対象となることもあります。複雑な社会保険の手続きをプロに任せたいという事業主様は、ぜひ「みらいく」にご相談下さい。
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