近年、精神疾患による休職や退職が増加しています。精神疾患により休職した従業員に対してどのような対応をすべきか解説します。
目次 1. はじめに 2. 休職する従業員への対応 3. 精神疾患による休職は比較的長期間になる場合も 4. おわりに |
本年7月に公表された、令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)の概況」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休職した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は、事業所全体の13.5%(前年13.3%)でした。
また、主に中小企業で働く従業員やその家族約4,000万人が加入している、全国健康保険協会(協会けんぽ)の「健康保険現金給付受給者状況調査報告(令和5年度)」によると、傷病手当金の受給の原因となった傷病は「精神および行動の障害」の割合が最も高く、全体の35.2%を占めていました。
従業員の精神疾患は、決して他人事ではなく、自社でも起こり得ると考えた方がよいでしょう。精神疾患により従業員が休職を願い出た場合は、トラブルにならないよう慎重に対応する必要があります。
休職する従業員への対応を誤ると、思わぬトラブルにも繋がりかねません。会社の労務担当の方は、自社で休職者が出た場合の対応方法について、事前に確認しておいた方がよいでしょう。
以下では、休職の申し出時から、復職(あるいは退職)までの流れについて、順番に解説します。
1. 休職申し出時
従業員が休職を申し出た際には、自社の就業規則等を確認し、休職の要件に該当しているかどうかを確認しましょう。
休職の要件に該当している場合、会社が指定する休職に関する書類(例:休職申出書など)、医師の診断書の提出を求めましょう。診断書を確認した上で、原則として就業規則等で定める休職期間の範囲内で、医師が指定した療養期間に合わせて「休職命令書」などの書面を交付します。
一般的に休職は会社が決定し、仕事を一定期間休んで治療に専念するよう命令する制度とされています。会社は医師の診断書を判断材料として休職の必要性を検討し、仕事ができる状態に回復するための療養期間として休職命令を出します。休職命令の書面には、以下の事項を記載しましょう。
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2. 休職期間中
休職期間中は、原則として「治療に専念するよう会社から命令されている期間」という位置付けになります。従業員のプライバシーに過度な干渉をすることは控えるべきですが、医師の診断等を考慮しつつ、場合によっては療養期間として不適当な行動は慎むよう伝えても良いでしょう。
*休職中には、健康保険の「傷病手当金」の支給申請時など、会社と休職者が連絡を取る機会もあるかもしれません。
3. 休職期間の延長
従業員が休職期間の延長を申し出た場合は、会社が命令した休職期間が終わる前に、延長期間についての医師の診断書の提出を求めましょう。
休職期間を超える延長の申し出については、会社は拒否することができます。ただし、過去に当該期間を超えて休職させることが常態化していた場合は注意が必要です。「他の人は延長されたのに自分だけ延長されないのは不当だ」などと主張される可能性があるからです。
4. 復職
休職と同様、復職についても原則として決定権は会社にあります。就業規則等に従い、休職者から復職に関する書類(例:復職願など)と医師の診断書の提出を求め、復職の可否を検討しましょう。会社には労働者の安全や健康に配慮する義務(安全配慮義務)があるので、復職可否判断は「復職させて問題ない状態まで回復しているか?」という基準で検討します。
休職者の主治医が作成した診断書は原則として尊重すべきですが、それだけで判断が難しい場合には、必要に応じて会社が指定した別の医師(例:会社の産業医)への受診を命じる可能性があることも、あらかじめルール化しておきましょう。
5. 自然退職
休職期間が満了しても復職できない場合は、通常、自然退職として取り扱われます。自然退職とは、従業員が休職期間を経ても回復しなかったことにより、従業員や会社の意思表示がなくとも、自動的に労働契約が終了し退職となることです。
協会けんぽにおける「精神及び行動の障害」の1件当たりの傷病手当金の受給日数の平均は 35.08日でした。これは「循環器」(36.75日)、「新生物」(36.45日)、「神経系の疾患」(35.21日)に次いで多い結果でした。精神疾患は、様々な傷病や疾患の中でも、働く人に比較的長期間の休業を余儀なくさせるといえます。
従業員の突然の休職は、会社の業務に与える影響も大きいです。休職に至る前に、できるだけ早く従業員のストレスや異変に気付き、適切なサポートを行いたいものです。
近年、精神疾患による休職や退職は増加しています。休職に至る前に、会社が適切なサポートを行えるように、日頃から職場におけるメンタルヘルス対策をしっかり行うことが大切です。それでも休職が発生してしまった場合に、スムーズに対応できるよう、あらかじめ就業規則等を整備しておきましょう。
精神疾患による休職・復職は、対応を間違えるとトラブルに発展してしまうこともあります。お困りの事業主様は、「みらいく」までご相談ください。