作成日:2026/01/16
日本の労働生産性はなぜ低い?2024年データで見る現状と中小企業が取るべき対策

日々の労務管理の現場で経営者様とお話しする中で、最近特に切実な悩みとして挙がるのが「人手不足」と「際限のない賃上げへの対応」です。こうした課題の解決策として挙がる「労働生産性」に関する最新の資料(※)が公表されましたので、見ていきましょう。
※(公財)日本生産性本部:「日本の労働生産性の動向2025」,「労働生産性の国際比較2025」, 中小企業庁 「2025年度版 中小企業白書・小規模企業白書」
目次 1.なぜ今、労働生産性が重要なのか? 2. 国際比較で見る日本の厳しい立ち位置 3.国内の労働生産性の実態 4.【企業規模別】生産性の動向と課題 5.生産性向上の壁は「価格転嫁」にあり 6. 中小企業の持続的成長を支える「3つの柱」 7.社会保険労務士と共に未来を創る |
日本の労働生産性に関する最新の2024年度のデータが(公財)日本生産性本部より公表(「日本の労働生産性の動向2025」)され、改めて厳しい現状が浮き彫りになりました。深刻な人手不足とコスト上昇が経営を圧迫する現代において、生産性の向上はもはや単なる努力目標ではなく、企業の生存と成長を左右する最重要の経営課題です。日々、人材確保やコスト管理に奮闘されている中小企業の経営者・人事担当者の皆様にとって、この「労働生産性」という指標は、自社の経営体質を映す鏡と言えるでしょう。
今回は、最新データを基に日本の労働生産性の現在地を分かりやすく解説し、特に中小企業が今後どのような対策を講じるべきか、その方向性を探ります。
まずは、国際的な視点から日本の立ち位置を確認しましょう。(公財)日本生産性本部より公表(「労働生産性の国際比較2025」)2024年のOECD(経済協力開発機構)のデータは、日本の置かれた厳しい状況を示しています。
OECD加盟38カ国中20位台後半、主要な指標は以下の通りです。
• 1人当たり労働生産性(図1): 98,344ドルで、OECD加盟38カ国中29位。
• 時間当たり労働生産性(図2): 60.1ドルで、OECD加盟38カ国中28位。
この1人当たりの労働生産性、日本はニュージーランドやスロバキアといった国々とほぼ同じレベルですが、主要先進7カ国(G7)の中で最下位です。この数値は、首位の米国の約半分という低水準の状況です。(図3)
(図1:OECD加盟諸国の就業者1人当たりの労働生産性)
(図2:OECD加盟諸国の時間当たりの労働生産性)
(図3:主要先進7カ国の就業者1人当たりの労働生産性)
出典:図1〜3(公財)日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」、図3作成:みらいく社会保険労務士法人)
3.国内の労働生産性の実態
国内の動向を見ると、名目上の数字は過去最高を記録しているものの、実質的な成長には課題が残ります。2024年度の国内データは以下の通りです。
• 1人当たり名目労働生産性(図4): 907万円(初めて900万円を突破)
• 時間当たり名目労働生産性(図5): 5,543円(1994年度以降で最高)
• 実質労働生産性上昇率(図6): +0.2%(時間当たり・1人当たり共に)
名目値が過去最高であるにもかかわらず、実質的な伸びが+0.2%と低い水準にとどまっているのには理由があります。これは、経済成長(+0.7%)によるプラス効果を、就業者数の増加(+0.5%)がほぼ相殺してしまっているためです。この国の状況は、多くの中小企業が日々直面する「事業は忙しくなり人も雇ったが、一人ひとりが生み出す価値は上がっていない」という課題を映し出しています。
一方、日銀短観でも深刻な人手不足が示されており(図7・8)、労働投入量(就業者数)を増やし続けることによる成長は持続可能ではありません。この国全体で見た実質成長の停滞は、すべての業界で一様に起きているわけではなく、特に多くの中小企業が属する産業分野では、それぞれに特有の課題として表れています。
(図4:日本の就業者1人当たり名目労働生産性の推移)
(図5:日本の時間当たり名目労働生産性の推移)
(図6:就業者1人当たり実質労働生産性上昇率の推移)
出典:図4〜6(公財)日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2025」
出典:図7・8日本銀行「短観」(2025年12月)、図8作成:みらいく社会保険労務士法人
4.【企業規模別】生産性の動向と課題
中小企業庁が公表した「2025年度版 中小企業白書・小規模企業白書」企業規模別の労働生産性の推移(図9)を見ると、大企業の労働生産性は増加傾向にあるのに対し、中小企業ではほぼ横ばいが続き、約30年前と比較すると緩やかに減少しています。
中小企業の業種別の推移(図10)を見ると、ほとんどの業種で横ばいで推移していて、特にサービス業はコロナ禍の急激な落ち込みからは回復してきたものの伸び率は低くなっています。
* 資本金10億円以上の大企業:1,589万円
* 資本金1千万以上1億円未満の中規模企業:579万円
* 資本金1千万円未満の小規模企業:503万円
5.生産性向上の壁は「価格転嫁」にあり
中小企業庁が公表した「企業規模別・業種別に見た価格転嫁の状況」によると、中小企業の労働生産性が停滞している背景には、大企業に比べて「価格転嫁」が進んでいないことが一因となっている可能性を示唆しました。
具体的に価格転嫁率(図11)を見ていくと、仕入価格の上昇分を販売価格に反映しきれない状況が続いています。転嫁率は5割近くまで上昇しているものの、依然としてコスト増を自社で吸収せざるを得ない状態です。
また、企業規模・業種別の価格転嫁力と労働生産性の関係(図12)からは、特に製造業においてその影響が顕著に表れています。中小製造業は大企業と比較して価格転嫁力が低く、これが一人当たりの付加価値額(労働生産性)を押し下げる大きな要因となっているのです。
2022年のウクライナ情勢に伴う輸入物価の高騰により、一時は中小製造業の価格転嫁力が大きく落ち込みましたが、2023年度には回復の兆しを見せています。一方、非製造業においては、2022年度以降、着実に価格転嫁が進んでいるという傾向も示されました。
(図12:価格転嫁力指標と労働生産性の関係性(企業規模別、業種別))
出典:図9〜12中小企業庁「2025年度版 中小企業白書・小規模企業白書」
6. 中小企業の持続的成長を支える「3つの柱」
人手不足やコスト高騰が続く今、中小企業が生き残り、成長し続けるためには、従来の延長線上ではない「攻めの経営」が求められています。その鍵を握るのが、以下の3つの方向性です。
・自動化・省力化設備への投資拡大
深刻な採用難への対策として、業務プロセスを根本から見直しましょう。機械やシステムで代替できる部分は積極的に自動化し、「人にしかできない業務」に集中できる環境を整えることが先決です。
・デジタル技術(生成AI等)の積極活用
最新のデジタルツールは、今や大企業だけのものではありません。生成AIなどを活用して業務を効率化し、そこで生まれた余裕を「新たな付加価値の創出」へと振り向けることが、競争力の源泉となります。
・適正な価格設定と価格転嫁の推進
コスト増を自社で抱え込まず、正確な原価把握に基づいた価格転嫁を行うことが重要です。適切な利益を確保してこそ、従業員の処遇改善や次なる投資への「好循環」が生まれます。
今回は、2024年度の最新データを基に、日本の労働生産性の現状を解説しました。国際的には依然として低い順位にあり、国内では名目値が伸びる一方で実質的な成長が鈍く、産業によっても大きなばらつきがあるのが実情です。
深刻化する人手不足の中、持続的な成長を遂げるためには、業務効率化や魅力的な職場の環境づくりがこれまで以上に重要になります。
また、価格転嫁によって得た利益をどう還元し、従業員のモチベーション向上につなげるかという「人事制度」の視点も重要になります。
「どこから手をつければいいのか分からない」「変革を進めたいが社内のリソースが足りない」とお悩みの経営者様は、ぜひみらいくにご相談ください。弊所では、煩雑なバックオフィス業務のアウトソーシングによる効率化支援から、成長を加速させる人事制度の設計・導入まで、貴社のフェーズに合わせた伴走支援を行っております。
変化の激しい時代だからこそ、外部の専門家を賢く活用し、生産性向上への第一歩を踏み出しませんか?