
先日の自民党の新総裁の発言から「ワークライフバランス」という言葉に注目が集まっています。昨今の働き方改革により、労働時間の短縮はますます重要視されています。本記事では、ワークライフバランスのための施策の一つとして「勤務間インターバル制度」について解説します。
| 目次 1. 勤務間インターバル制度とは 2. 勤務間インターバル制度を導入した場合の働き方のイメージ 3. 制度導入の目的と効果 4. 法的な位置づけと助成金制度 5. おわりに |
「勤務間インターバル制度」とは、一日の勤務終了後、翌日の勤務開始までの間に、一定時間の休息(インターバル時間)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。すなわち「休む時間を保障する制度」です。
EU諸国では、すでに「1日11時間以上の休息時間確保」が法的に義務づけられています。
日本では、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年7月6日公布)によって、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)が改正されたことにより、「勤務間インターバル」制度導入が企業の努力義務となりました。従業員の心身の健康確保・過労防止の観点から、関心が高まっています。
「勤務間インターバル」制度を導入した場合、例えば下図のような働き方が考えられます。
実際に企業が導入している勤務間インターバル時間は、9〜11時間が多く設定されています。たとえば、インターバルを「11時間」と設定した場合、夜22時に退勤した従業員は翌日の出勤を午前9時以降にする必要があります。
夜間シフトや交替制勤務のある職場では、勤務シフトを作成する際にインターバル時間を踏まえる必要があります。
また、この他に、一定時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないことなどにより「休息期間」を確保する方法も考えられます。
勤務間インターバル制度の最大の目的は、過重労働を防ぎ、働く人の生活と健康を守ることです。この制度導入により期待される具体的なメリットは、次のとおりです。(出典:働き方・休み方改善ポータルサイト)
メリット@従業員の健康の維持向上に繋がる
→インターバル時間が短くなるにつれてストレス反応が高くなるほか、起床時疲労感が残ることが研究結果から明らかになっています。十分なインターバル時間の確保が、従業員の健康の維持・向上につながります。
メリットA従業員の定着や確保が期待できる
→労働力人口が減少する中、人材の確保・定着は、重要な経営課題になっています。十分なインターバル時間の確保により、ワークライフバランスの充実を図ることは、職場環境の改善等の魅力ある職場づくりの実現につながり、人材の確保・定着、さらには、離職者の減少も期待されます。
メリットB生産性の向上に繋がる
→十分なインターバル時間の確保は、仕事に集中する時間とプライベートに集中する時間のメリハリをつけることができるようになります。このため、仕事への集中度が高まり、製品・サービスの品質水準が向上するのみならず、生産性の向上にも期待できます。
厚生労働省では、制度導入を後押しするため、「働き方改革推進支援助成金 勤務間インターバル導入コース」(所定のインターバル時間を設定し、制度導入や就業規則変更、管理システム導入等を行った企業に対して助成する)を設けています。
また、令和3年に変更された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」においては、勤務間インターバル制度の数値目標として以下が定められています。
|
・ 令和7年(2025年)までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする。
・ 令和7年(2025年)年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする。
|
今回の記事では「勤務間インターバル制度」を取り上げました。勤務間インターバル制度は、働き方の見直しのための他の取組みと併せて実施することで、一層効果が上がると考えられ、従業員の健康やワークライフバランスの確保策として期待されています。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、勤務間インターバル制度の詳細説明、企業導入事例などが公開されています。制度導入をお考えの企業様は、活用してみてはいかがでしょうか。