作成日:2025/09/08
外国人材の確保〜技能実習から育成就労へ

深刻な人手不足の中、外国人材の活用が一層求められています。そのような中、外国人の「技能実習制度」が、2027年を目途に「育成就労制度」に切り替わることが予定されています。この記事では、制度の概要・移行スケジュール・企業に求められる対応について解説します。
目次 1. 制度変更の背景と目的 2. 技能実習法から育成就労法へ 3. 特定技能とは 4. おわりに |
制度変更の背景と目的
近年、我が国の人手不足が深刻化している一方で、国際的な人材獲得競争も激化しています。また、これまでの技能実習制度では、制度目的と実態の乖離や、外国人の権利保護などの課題が指摘されていました。
人手不足への対応の一つとして、外国人の受入れも欠かせない状況にある中、外国人にとって魅力ある制度を構築することで、我が国が外国人から「選ばれる国」となり、我が国の産業を支える人材を適切に確保することが重要です。
そこで、技能実習制度を見直し、人材育成と人材確保を目的とする「育成就労制度」が新たに創設されることになりました。
2024年6月14日、技能実習に代わる新たな制度「育成就労」を新設するための関連法の改正が、国会で可決・成立しました。この法改正により「技能実習法」は「育成就労法」(「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律)へと改められ、また、法律の目的も「開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』への協力」から、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」「育成就労産業分野における人材の確保」に改められました。
◆技能実習と育成就労との比較
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技能実習制度
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育成就労制度
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目的
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人材育成を通じた国際貢献
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人材育成と人材確保
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在留資格
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技能実習1号、2号、3号
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育成就労
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期間
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1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)
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原則3年
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転籍
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実習先の倒産などの やむを得ない場合を除き、 原則として認められない
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やむを得ない場合に加え、 1〜2年経過で本人希望により転籍可
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前職要件
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あり
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なし
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帰国後の技能活用
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復職または送出機関が 技能を活用できる就職先を あっせんすることが求められる
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なし
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日本語能力の要件
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介護以外はなし
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あり
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特定技能1号への移行
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同一職種の場合、試験免除
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試験合格が必要
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表1 技能実習制度と育成就労制度の比較(出典:公益財団法人国際人材協力機構「育成就労制度とは」)
技能実習と育成就労の比較は、表1の通りです。育成就労においては、育成就労外国人が育成就労産業分野において就労(原則3年以内)することにより、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的としています。
特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。2018年に可決・成立した改正出入国管理法により、在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。
以下は、制度見直しのイメージ図です。
◆スケジュールと移行期間
育成就労制度の施行日は「公布後3年以内」とされていますが、現時点では未定です。なお、2025年4月28日から実施された育成就労法施行規則等に係るパブリックコメントにおいては、今後の予定として2027年4月1日施行とされています。
◆受け入れ対象分野・人数
育成就労制度の受入れ対象分野(育成就労産業分野)は、技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく、新たに設定することとされています。
また、特定技能への移行を目指すものであるため、受け入れ対象分野は「特定産業分野」のうち、育成就労を通じて技能を習得させるべき分野に限る(国内での育成になじまない分野は対象外)とされています。また、季節性のある分野においては、派遣形態による育成就労の実施が認められます。

・介護 ・ビルクリーニング ・工業製品製造業 ・建設
・造船、舶用工業 ・自動車整備 ・航空 ・宿泊 ・自動車運送業
・鉄道 ・農業 ・漁業 ・飲食料品製造業 ・外食業 ・林業・木材産業
◆育成就労外国人受け入れの方式
育成就労外国人の受け入れの方式には、下記の2種類があります。
- 単独型育成就労:日本の企業等(単独型育成就労実施者)の外国にある事業所の職員が、日本にある事業所で技能を修得しながら業務に従事する。
- 監理型育成就労:日本にある事業協同組合、商工会等の非営利法人(監理支援機関:許可制)によって受け入れられ、傘下の企業等(監理型育成就労実施者)で技能を修得しながら業務に従事する。
これまで、様々な課題が指摘されてきた技能実習制度に変わり、育成就労制度が設けられることとなりました。新たな制度では、これまでの課題を解消するとともに、特定技能制度との連続性を持たせることで、外国人の方が我が国で就労しながらキャリアアップできる制度を構築し、長期にわたって、我が国の産業を支える人材を確保することが期待されます。
外国人労働者の確保を検討している企業の方は、育成就労に関する今後のニュースに注目していきましょう。