毎年10月は、地域別最低賃金の改定があります。それに加え今年は、働く人の「学びなおし(リスキリング)」や「育児期の柔軟な働き方の実現」ならびに「学生の扶養内で働くため年収要件」に関して法改正が行われ施行されますので、まとめてご紹介します。
目次 1. 地域別最低賃金 2. 教育訓練休暇給付金 3. 育児期の柔軟な働き方の実現 4. 健康保険の被扶養者の年収要件 |
図1:2025年改定後の最低賃金(時給) 出典:沖縄タイムスプラス「最低賃金39道府県目安超え 全国で時給千円突破 沖縄は最も低い1023円 」
毎年10月は、地域別最低賃金の改定ならびに発効があります。
静岡県は、最低賃金1,097円(前年比+63円)、発効日は2025年11月1日になります。
【令和7年度のポイント】
・全都道府県で、63円〜82円の引上げにより1,000円超え、全国加重平均額は1,121円(前年度1,055円)
・地域格差改善(最高額1,226円に対する最低額1,023円の比率83.4%)
・例年10月から11月に発効されていたが、今回は10月から来年3月まで時期もさまざま
出典:厚労省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」
◆業務改善助成金
今回の大幅な最低賃金の引き上げに向けた環境整備のため、厚生労働省から事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等を支援する「業務改善助成金」の拡充について発表されました。
【拡充のポイント】
・申請可能な事業所が拡大
・賃金引上げ計画の事前提出を省略可能とする
出典:厚労省「9月5日から対象事業所を拡充令和7年度業務改善助成金を一部変更します」
今回の見直しにより、助成金が利用しやすくなっていますが、発効日が早い地域では早めの対応が必要です。また、政府が掲げる、骨太の方針では「2020年代に最低賃金1,500円」を目指していることもあり、年々引き上げが見込まれるため、今後も先を見据えた視点が必要となります。
出典:厚労省「9月5日から、事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等を 支援する「業務改善助成金」を拡充します」
従業員の自発的な能力開発のため、在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活費として、失業給付(基本手当)に相当する新たな給付金「教育訓練休暇給付金」が創設されます。
◆教育訓練休暇給付金
一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者が、就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合、教育訓練休暇給付金の支給が受けられます。
【支給要件】
• 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
(原則、11日以上の勤務実態がある月が被保険者期間として算定の対象になります)
• 休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
(離職期間等がある場合であっても、一定の要件に合致すれば加入期間を通算できます)
• 業務命令によらず、就業規則等に基づき教育訓練を受けるための無給の休暇を取得していること
給付金を受けるのは、労働者本人になりますが、本制度活用のための就業規則等の整備は事業主の対応が必要になりますので、ご相談ください。
出典:厚労省「教育訓練休暇給付金」
男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化などの改正が段階的に施行されています。
◆柔軟な働き方を実現するための措置
企業は、3歳から小学校就学前の子を養育する従業員について、「*5つの選択して講ずべき措置」の中から、2つ以上の制度を選択して導入し、対象の従業員がその中から1つを利用できるようにし、従業員に対して個別の周知、意向確認を措置することが義務づけられます。
・企業が講ずる措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
選択して講ずべき措置(*)
@ 始業時刻等の変更
A テレワーク等(10日以上/月)
B 保育施設の設置運営等
C 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇
(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
D 短時間勤務制度
◆仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
企業は、従業員が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、従業員の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について、従業員の意向を個別に聴取し、自社の状況に応じて配慮が義務付けられます。
出典:厚労省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内令和7(2025)年4月1日から段階的に施行」
「柔軟な働き方を実現するための措置」について、従業員のニーズや自社の状況を把握し、導入方針を決定していきます。決定内容について、就業規則や社内規程の見直しや整備が必要となりますので、その際はご相談ください。
厳しい人手不足の状況における就業調整対策等の観点から、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における特定扶養控除の要件の見直し等が行われ、扶養認定を受ける方(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合の年間収入要件の取り扱いが、現行の「年間収入130万円未満」から「年間収入150万円未満」に変わります。
◆被扶養者認定について
【年間収入要件】
年間収入150万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)および
・同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
【年齢要件(19歳以上23歳未満)の判定】
年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。
例えば、扶養認定を受ける方が令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、令和7年(暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。
【対応のポイント】
今回の要件変更による従業員からの扶養追加の申請が増える可能性があるため、早めに社内周知をしていきましょう。
令和7年10月1日以降の届出で、令和7年10月1日より前の期間について認定する場合、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる年間収入の要件は130万円未満で判定となるため、要件確認に注意してください。
出典:日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」