作成日:2025/07/11
退職代行サービスへの対応策を考える

目次 1. はじめに 2. 退職代行の種類 3. 労働者が退職代行を利用する理由、メリットとデメリット 4. 企業側の課題とリスク 5. 職場改善への活用 6. おわりに |
はじめに
近年、「退職代行サービス」が急速に広まり、その是非が議論されています。
退職代行は、労働者が会社に退職の意思を伝える場面で、第三者がその橋渡し役を担うサービスです。退職者の精神的負担を軽減するメリットがある一方、退職を自ら伝えることができない点を批判する意見もあります。以下、退職代行についての解説と、企業の対応策について紹介します。
退職代行サービスには、主に弁護士(法律事務所)が運営する「法的対応が可能なもの」と、弁護士資格のない業者が提供する「通知代行のみ」のものが存在します。
弁護士でない者が、法律的な問題について本人を代理して相手方と話をすることは、弁護士法第72条に定める「非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止」(いわゆる「非弁行為」)として違法になります。したがって、弁護士資格のない業者は法的交渉ができず、単に「退職の意思を伝える」にとどまります。

労働者が退職代行を利用する理由、メリットとデメリット
無期雇用(期間の定めのない契約)の労働者は、民法第627条により原則2週間前の通知で退職が可能です。それにもかかわらず退職代行を利用する労働者側の心理はどのようなものでしょうか。
就職情報サイトのマイナビが2024年7月に行ったインターネット調査によると、直近1年間で退職した20代の2割が退職代行を利用していました。
退職代行を利用した理由として挙げられたのは、「退職を引き留められたから(引き留められそうだから)」が最も多く、「自分から退職を言い出せる環境ではないから」、「退職を伝えたあとにトラブルになりそうだから」が続きました。
図1 退職代行サービスを利用した理由
<調査概要>
・調査期間:2024年7月4日〜18日
・対象:2023年6月からの1年間に転職した20〜50代の正社員
・回答数:800件
退職代行を利用した方は、会社側との直接の対面を避けることによって、退職の引き留めを回避できる、気まずい退職交渉のストレスが軽減できる、退職を伝えた後のトラブルを回避できると考えている人が多かったようです。
一方で、退職代行を利用することにはデメリットもあります。まずは費用の問題です。代行業者の場合でも数万円〜、弁護士の場合では数十万円〜という費用が発生します。業者によって費用やサービス内容は異なるため、事前によく確認しておく必要があるでしょう。また、辞める会社への印象を悪くする、お世話になった上司や同僚に挨拶ができないことで心残りが生じるという意見もあるようです。
企業にとって退職代行は、突然の退職連絡が来ることによる混乱を招くほか、以下のような課題が発生します。
【業務引き継ぎの不足】
突然退職されることで、他の従業員の負担が増大します。
【法的対応の複雑化】
非弁護士の業者が違法な交渉を持ち掛けてくるケースもあり、法務面での慎重な対応が必要です。
退職代行利用による退職は、企業にとって望ましいものではないかもしれません。ただしこれに感情的な反応をせず、冷静な対応を心がけてください。また、退職代行を利用されたことを、職場環境全体を見直すきっかけと捉えることもできます。特に以下の対策は、以後の退職トラブルの未然防止に役立ちます。
【ハラスメント対策の強化】
退職代行利用が特定の部署で繰り返し起っている場合、その部署の上司や同僚からのハラスメントの可能性を考えましょう。普段の声掛けが高圧的すぎたり、感情的な指導をしたりしていないかを確認しましょう。
【退職面談の実施】
退職面談とは、人事担当者等が退職を決めた労働者に対して行う面談です。無理な引き留めや非難をせずに、退職に至った経緯や組織の改善意見、苦情などをインタビューします。安全を確保するために、本人が公表を望まない情報を保護するように気をつけます。
退職の理由は人それぞれであり、一概には言えませんが、労働者が「退職を直接伝えたくない」と思うような原因がもし職場側にあるとすれば、その原因を把握し、改善していくことが必要でしょう。
近年、退職代行による退職が広がりつつあります。退職代行サービス自体は違法なものではありませんが、退職代行にも種類があり、弁護士以外による法的交渉は禁止されていることを知っておきましょう。
労働者が退職代行を利用した理由としては、退職の引き留めやトラブルを避けたい、自ら退職を言い出せる環境でない、などの理由がみられました。企業側としては、退職代行による退職はショックが大きいかもしれません。しかし、ハラスメント等の職場環境の問題や従業員とのコミュニケーションを改善する機会だと捉えることもできます。
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