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作成日:2025/04/30
企業の生産性向上と従業員満足度を高める「休憩時間」活用術

 


目次
 1. はじめに
 2. 休憩時間と生産性・満足度の関係
 3. 休憩時間を活用した生産性・エンゲージメントの向上  
 4. 企業の取組例
 5. おわりに

はじめに

近年「働き方改革」が推進される中で、労働時間の短縮だけでなく「いかに効率的に働くか」という生産性の観点が重視されています。
最新の研究によれば、休憩時間の適切な設計と運用は、従業員の集中力とパフォーマンスを向上させ、企業全体の生産性の向上、従業員の満足度の向上にもつながることが明らかになっています。
本記事では、法令遵守の観点だけでなく、人材マネジメント戦略として休憩時間をどのように活用すべきかを詳しく解説します。
 
休憩時間と生産性・満足度の関係

◇休憩時間が生産性に与える効果
人間の集中力には限界があり、適切な休息なしに長時間作業を続けると、脳の処理能力が著しく低下します。スタンフォード大学の研究によると、人は約20〜30分間の集中が限界で、それを超えると注意力散漫になり、生産性が低下することが判明しています。
計画的に休憩を取り入れることで、集中力を維持し、継続的に高いパフォーマンスを発揮できます。企業にとって休憩時間は「時間のロス」ではなく、むしろ「生産性向上への投資」として捉えるべきものなのです。
 
◇休憩時間と従業員満足度の相関関係
パーソル総合研究所の「はたらく人の休憩に関する定量調査」によると、休憩時間に「休めている」と感じている従業員は、「休めていない」と感じている従業員と比較して、休憩後の肉体的、精神的な疲労度が低く、休憩後の業務に集中して取り組めていることがわかりました。また、休めている実感のある人は「プレゼンティズム」(出勤しているにもかかわらず、心身の健康上の問題があり、生産性が下がっている状態)の発生割合が低くなりました。これらの結果から、適切な休憩は生産性にポジティブな影響を与えるといえます。
 
◇労働基準法の休憩時間規定を活かした戦略的な休憩設計
労働基準法では、休憩時間について以下のように規定されています。
 
        労働時間       休憩時間
 6時間以内  与える義務なし
 6時間超〜8時間以内   少なくとも45分
 8時間超  少なくとも1時間  
 ※これは最低限の基準です。

人材マネジメントの観点からは、法令遵守に加えて、従業員の生産性と満足度を最大化するために休憩を活用していくことが重要です。
例えば、45分の休憩時間を確保した上で、さらに15〜20分の短い休憩を午前と午後に設けるなど、戦略的に休憩を取ることで、集中力維持と気分転換を図ることができます。
なお、労働基準法では休憩時間を「労働時間の途中に与えなければならない」と定められているため、たとえ従業員の希望があっても、労働時間の開始前や終了後に休憩を与えることはできません。休憩の重要性を説明し、必ず取得するよう促しましょう。
 
休憩時間を活用した生産性・エンゲージメントの向上

◇生産性向上に効果的な休憩
企業の競争力向上において、従業員一人ひとりの生産性の最大化が不可欠です。そのための効果的な休憩戦略としては、例えば以下の方法があります。
 
1. ポモドーロテクニックの導入
25分の集中作業と5分の休憩を交互に繰り返す時間管理術です。脳の集中サイクルに合わせた働き方として知られています。
 
2. パワーナップ(短時間の仮眠)の奨励
NASAの研究では、26分間の仮眠によって、認知能力が34%、注意力が54%向上したという結果が報告されています。
 
3. アクティビティの実施
休憩時間に軽い運動や瞑想、散歩、ストレッチなど、デスクから離れて体を動かすことで、血流が改善され、脳機能が活性化して、午後の集中力低下を防ぎます。
 
4. 社内コミュニケーションの促進
休憩時間に同僚と会話や食事をすることで、SNSの閲覧などよりもはるかに高いリフレッシュ効果が得られることが分かっています。
 
5. 栄養管理の支援
社員食堂のある企業では、栄養バランスの良い食事を社内で提供することで「食後の眠気」を防ぎ、午後のパフォーマンス維持につなげている例もあります。
 
  
一方で、仕事をしながらの休憩、デスクに座ったままの休憩については、従業員の「休めている実感」が低く、精神的・肉体的疲労や生産性の低下が発生しやすい傾向があり、効果の低い休憩であることがわかりました。より効果的な休憩時間の過ごし方について、従業員への啓発を行いたいものです。
 
◇休憩の質の向上と従業員エンゲージメント
休憩の質の向上は、従業員のエンゲージメント(会社への愛着や思い入れ)と定着率に大きな影響を与えます。適切な休憩により、従業員が「休めている実感」を感じられることで、以下のような効果が期待できます
 
1. 企業文化の構築
質の高い休憩時間を大切にする文化は「従業員の健康と幸福を重視する企業」というブランドイメージの構築につながります。これは新卒・中途採用における優位性にもつながり、人材確保の観点でも重要です。
 
2. チームワークの強化
従業員同士が交流できるスペースでの休憩時間は、部門間の交流を促進し、組織の一体感とチームワークを高める効果があります。近年、ハイブリッドワーク(オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方)が広がる中、対面コミュニケーションの質を高める役割も果たします。
 
3. 創造性の促進
休憩中のリラックスした状態は、創造性を高めると言われています。
 
企業の取組例

ここでは実際の企業の取組を紹介します。
 
◇パワーナップ制度
・三菱地所株式会社
2018年、本社ビル内に仮眠室を設置し、実証実験を行いました。アンケートでは「仮眠を取ることで作業の生産性が良くなった」と回答した割合は3分の2に上りました。
 
・ANA(全日本空輸株式会社)
2025年2月、整備士や技術スタッフを対象に、航空業界で初のパワーナップを導入しました。航空機の安全の更なる向上、働き方を大きく変えるきっかけとなることが期待されています。
 
また海外企業ではGoogle、ナイキ、Apple、Microsoftなどの大企業がパワーナップを導入しています。
 
 
 
◇エクササイズの実施
・株式会社オリエントコーポレーション
 昼の休憩時間を利用し、アスリート社員と一緒に、バランスボールやゴムチューブを使ったエクササイズを実施しています。
 
・株式会社SUBARU
 2023年から、事業所内の道路を昼休みにウォーキングやランニングができる場所として開放するイベントが開始されました。2024年夏には昼休みにフィットネスのイベントも実施されました。

     
                                                            

私たち「みらいく」でも、昨年、理学療法士の影山卓臣先生をお招きして、セルフケアの理論と実技を学びました。セルフケアは、心身の健康維持に加えて、仕事の生産性向上にも効果がありそうで、参加したスタッフからも好評でした。
 
 
おわりに

現代のビジネス環境では、長時間の労働よりも、質の高い労働時間と適切な休息のバランスが求められています。適切な休憩時間の設計と運用は、従業員の健康維持だけでなく、企業の生産性向上にも直結する要素です。
休憩時間を戦略的に導入・改善していくことが、企業の持続的な成長につながるでしょう。
 


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