産休や育休を取得する場合に社会保険料が免除される制度や、育休から復帰した従業員向けの特例措置についてご紹介します。
目次 1. 産休や育休期間中の保険料免除 2. 産休終了後・育休終了後の特例(報酬月額の変更) 3. 年金額の特例(養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置) 4. おわりに |
◇産前産後休業期間中の保険料免除
産前産後休業期間(出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)の、健康保険・厚生年金保険の保険料は、申出をすることにより、被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。
なお、この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。
◇育児休業等期間中の保険料免除
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間の、健康保険・厚生年金保険の保険料は、申出をすることにより、被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。
この免除期間も、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。
図1 休業期間中の保険料の免除措置(☆)
出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
図2 産休終了後・育休終了後の社会保険料の特例 制度の概要(★)
健康保険・厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を、保険料や年金額の計算に用います。
産前産後休業又は育児休業等を終了した後、育児等を理由に報酬が低下した場合、被保険者が実際に受け取る報酬の額と標準報酬月額が、かけ離れた額になることがあります。
そこで、低下後の報酬に対応した標準報酬月額とするため、産前産後休業を終了したとき(※1)又は育児休業等を終了したとき(※2)に被保険者が事業主を経由して申出をした場合は、随時改定の要件に該当しなくても、標準報酬月額の改定をすることができます。
※1 産前産後休業終了日において当該産前産後休業に係る子を養育する場合に限ります。また、産前産後休業終了日の翌日に育児休業を開始している場合は、申出できません。
※2 育児休業等終了予定日において3歳に満たない子を養育する場合に限ります。
図3 休業期間終了後の標準報酬月額の改定(☆)
図4 3歳未満の子を養育する期間についての年金額計算の特例 制度の概要(★)
(★)図2/図4の出典:「育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します」
子どもが3歳に達するまでの養育期間中に標準報酬月額が低下した場合、養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、その子どもを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる制度があります。
この制度の適用を受けることで、子の養育を始めた月の前月の標準報酬月額が養育期間中の標準報酬月額とみなされ、子を養育する前の標準報酬月額(従前標準報酬月額)に基づく年金額を受け取ることができます。
養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でない場合(例:子の養育を始める前に退職し、その後養育期間内に再び働き始めた場合など)には、養育開始月の前月の直近1年以内で、最後に被保険者であった月の標準報酬月額が従前報酬月額とみなされます。
養育開始月の前月の直近1年以内に被保険者期間がない場合は、みなし措置は受けられません。
図5 標準報酬月額の特例措置(厚生年金保険のみ)(☆)
(☆)図1/図3/図5の出典:日本年金機構「子育て支援制度の各種手続き(概要)」
今回は、産休や育休を取得する場合の社会保険料免除制度や、育休から復帰した従業員に適用される措置についてご紹介しました。従業員本人がこれらの制度に詳しくない場合も多いため、対象の従業員がいる場合には、会社側から周知を行うことが望ましいでしょう。
社会保険の制度は少々複雑な部分もありますが、会社や従業員の支払う保険料、従業員の将来の年金額に影響するため、制度を正しく理解し、適切な時期に手続きを行うことが大切です。手続き等でお困りの事業主様は、私たち「みらいく」にご相談ください。