もうすぐ新入社員を迎える季節となります。人手不足の中、良い人材を確保し、長期的に働いてもらうことは会社にとって大変重要です。統計調査の結果を参考に、若年労働者の定着に効果的な対策について考えてみましょう。
目次 1. 若年者雇用実態調査 2. 若手社員のメンタルヘルス不調の実態 3. おわりに |
昨年9月に厚生労働省から「令和5年若年者雇用実態調査の概況」が公表されました。
若年者雇用実態調査とは、事業所における若年労働者の雇用状況、若年労働者の就業に関する意識など若年者の雇用実態について、事業所側、労働者側の双方から把握することにより、若年者の雇用に関する諸問題に的確に対応した施策の立案等に資することを目的とした調査で、5年に1度実施されています。
令和5年の調査は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所(17,355事業所)及び当該事業所で就業している令和5年10月1日時点で満15〜34歳の若年労働者(22,958人)を対象に行われました。
【事業所調査】
◆若年労働者のいる事業所の割合
令和5年10月1日現在で、若年労働者が就業している事業所の割合は 73.6%でした。その内訳は「若年正社員がいる」事業所が 62.0%、「正社員以外の若年労働者がいる」事業所が 34.4%でした。 また、前回調査(平成30年)と比較すると「若年労働者がいる」事業所の割合は、正社員、正社員以外ともに低下していました。
◆自己都合により退職した若年労働者の有無
過去1年間(令和4年10月〜令和5年9月)に若年労働者がいた事業所のうち、「自己都合により退職した若年労働者がいた」事業所の割合は 40.9%でした。雇用形態別(複数回答)にみると「正社員」が 28.4%、「正社員以外」の若年労働者が 18.4%でした。
◆定着のための対策
若年正社員の「定着のための対策を行っている」事業所は 73.7%、正社員以外の若年労働者の「定着のための対策を行っている」事業所は
60.1%でした。
若年労働者の定着のために実施している対策(複数回答)をみると、「職場での意思疎通の向上」「採用前の詳細な説明・情報提供」「本人の能力・適正にあった配置」の順に多くなっています(表1)。
表1 雇用形態、若年労働者の定着のために実施している対策別事業所割合(※)
また、それぞれの項目について、前回(平成30年)調査との増減を比較すると、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」を実施する事業所割合が大きく増加しています(表2)。
表2 若年労働者の定着のために実施している対策別事業所割合の増減(※)
【個人調査】
◆初めて勤務した会社をやめた主な理由
初めて勤務した会社をやめた理由(3つまでの複数回答)についてみると、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係がよくなかった」「賃金の条件がよくなかった」「仕事が自分に合わない」の順に多くなっています(表3)。
表3 初めて勤務した会社をやめた主な理由(抜粋)(※)
また、初めて勤務した会社での勤続期間別にみると、1年未満の期間では「人間関係がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっています。
◆転職希望とその理由
若年正社員が、現在の会社から今後「転職したいと思っている」割合は 31.2%、「転職したいと思っていない」割合は 30.3%でした。 また、今後転職したいと思っている若年正社員について、転職しようと思う理由(複数回答)をみると「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が 59.9%、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」が 50.0%と高くなっています。
表4 転職しようと思う理由(抜粋)(※)
(※出典:令和5年若年者雇用実態調査 結果の概要)
近年、若手社員のメンタルヘルス不調による休職や離職が増加傾向にあることが指摘されています。
昨年8月から9月にかけて行われた、株式会社パーソル総合研究所の「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」によると、20代正規雇用者の5人に1人が過去3年以内にメンタルヘルス不調を経験しています。その原因としては以下の5つが挙げられています。
@ 仕事のプレッシャー・難しさ
他の年代と比べて「仕事のプレッシャー・難しさ」を挙げた人がやや多くなっています。次に多いのは「上司との関係・ハラスメント」です。
A 拒否回避志向
若年層は、他者からの否定的評価を避けようとする「拒否回避志向」(怒られたくない、人目を気にする、受け身の姿勢、失敗への恐れ、対立回避)が強い傾向があり、上司からの叱責により、ストレス反応が高まりやすいとされています。
B キャリア不安
20代の約8割が、将来のキャリアに不安があると回答しています。
C スクリーンタイム
若年層ほど、スマホ等のデジタル画面の使用時間(スクリーンタイム)が長く、特にテレワーク実施者やIT・間接部門・事務職で長いです。スクリーンタイムが長いほど、脳疲労や眼精疲労、ストレス反応が高まるとされています。
D テレワーク下の孤独感
20代では、30代以上と異なり、テレワーク実施者の孤独感が高いことがわかっています。
また、メンタルヘルス不調を職場に相談した社員は2人に1人となっており、この傾向に年代差はありませんでした。その一方で、職場に相談しなかった20代の退職率は35.2%と、他の年代よりも高くなっていました。
人手不足の中、若手社員の離職は痛手で、管理職にも大きな負荷となるでしょう。若年労働者の定着のためには、メンタルヘルス対策も重要な課題となりそうです。
今回は若年労働者の定着というテーマで、2つの統計調査結果をご紹介しました。人手不足の中、若年人材の定着は多くの企業にとって重要な課題です。私たち「みらいく」では、働きがいのある組織づくり支援をサポートしています。人材の定着に関するお悩みは、ぜひ私たちにご相談下さい。