インスタグラムやXなど、SNSによる求人募集は、幅広い層にアプローチできる効果的な手段です。しかし、昨今の「闇バイト問題」などの影響もあり、SNS 求人の安全性が一部で不安視されています。このような状況を受けて、厚生労働省から、SNS求人に関する注意喚起資料が発表されています。
目次 1. いわゆる「闇バイト」問題 2. 募集情報には「6情報」を記載しましょう 3. 募集情報記載のルール 4. SNS特有の注意事項 5. おわりに |
厚生労働省は昨年12月、職業安定法に基づく通知を発出し、求人企業側、求職者側のそれぞれに対して、注意喚起のリーフレット(※後述)を公表しました。
昨今、SNSやインターネット掲示板において、仕事の内容を明かさず、著しく高額な報酬の支払を示唆するなどして、犯罪実行者を募集する、いわゆる「闇バイト」等の問題が発生しています。その中には、通常の募集情報と誤解させる記載も見受けられます。「簡単に高収入を得られる」と応募した結果、強盗や詐欺などの犯罪に加担することとなり、逮捕された者もいます。
職業安定法第5条の4第1項では、募集情報等について「虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」と規定されています。
今回の厚生労働省からの通知により、募集情報等には、求人者又は労働者の募集を行う者の「氏名(名称)、住所(所在地)、連絡先、業務内容、就業場所、賃金」の6情報を含める必要があることが明確化されました(なお、労働者の募集だけでなく、業務委託の募集の場合でも同様です)。インターネットやSNS等で労働者の募集をする場合は、これらの6情報が記載されていないと法令違反となるため、十分に注意しましょう。
【厚生労働省リーフレット:求人企業向け】
図1 募集情報提供時の注意点(※)
***悪い例***
図2 募集主の氏名等がない募集情報の提供
(※図1・2の出典:リーフレット「SNS等を通じて直接労働者を募集する際には氏名(名称)・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金を記載しましょう」)
【厚生労働省リーフレット:仕事をお探しの方向け】
募集情報を記載する際には「6情報」の記載が必須ですが、その他にも気を付けなければならない事項があります。先ほどの求人企業向けリーフレットの「Q&A」に掲載されているものを中心に、いくつかご紹介します。
◇6情報を記載する場所
SNS 広告を利用して求人をする場合、広告原稿に自社求人サイト等のリンクを掲載するのみでは足りないとされています。そもそも求人であるかどうかも含め、誤解を招く可能性があるため、募集情報を提供する広告等自体に6情報を記載しましょう。
◇企業の連絡先の設定
一般的に、SNSにはダイレクトメール(DM)という機能がありますが、労働者になろうとする者に誤解を生じさせないようにする必要があるため「電話番号」「メールアドレス」「自社ウェブサイト上に備え付けられた専用の問い合せフォームへのリンク」のいずれかを記載する必要があります。
◇業務内容、就業場所及び賃金に関する表記
募集情報への業務内容、就業場所及び賃金の記載については、労働者を募集する際の労働条件の明示(職業安定法第5条の3)や、労働契約締結時の労働条件の明示(労働基準法第15条)の際に必要な項目と、必ずしも同じである必要はありませんが、広告等を見た応募者に誤解を与えない記載とする必要があります。
例えば、就業場所について「就業場所の変更の範囲」は記載せず「雇入れ直後の就業場所」のみを示す形や、複数の候補を示し「応相談」とする形、賃金について「時給1500円〜」とする形でも、記載があれば、個別具体的な判断とはなりますが、直ちに法違反とはならないと考えられます。
◇差別や偏見のない表現の使用
男女雇用機会均等法や労働基準法により、性別、年齢、国籍、信条、障害の有無などを理由とした差別的な表現は禁止されています。 例えば「20代限定」「主婦パート募集」「男性限定」などの年齢や性別を限定した求人は、法的に問題視される可能性があります。これらに違反すると、求人企業の社会的信用が損なわれるだけでなく、行政指導や罰則の対象になることもあります。
◇著作権や肖像権への配慮
SNS で求人広告を掲載する際には、使用する画像や動画の著作権や肖像権を侵害していないか注意しましょう。自社の従業員の写真や動画を使用する場合も、事前に個別の許可を得るようにして下さい。
◇規約違反と炎上リスク
SNSの利用規約に違反する方法で広告を掲載した場合、アカウントの停止や法的措置を受ける可能性があります。 またSNS 求人はその特性上、炎上した際に拡散されやすいです。SNSでの炎上は企業の社会的信用に関わります。求人広告が誤解を招く表現になっていないか、掲載前に客観的にチェックすることも大切です。
SNS等を利用した求人募集は大変便利なものですが、残念なことに、それを利用した犯罪やトラブルも増えています。応募する方に誤解を与えないよう、自社の募集情報がルールに沿った物となっているか、掲載前に内容をチェックしてみることをおすすめします。
私たち「みらいく」では、顧問先企業様の採用のサポートも行っています。求人募集や採用に関してお悩みの事業主様は、ぜひ私たちにご相談下さい。