本年5月に「次世代育成支援対策推進法」が改正され、来年4月から施行されます。法改正のポイントを解説します。
目次 1. 次世代育成支援対策推進法とは 2. 一般事業主行動計画とは 3. 次世代法改正のポイント 4. 両立支援のひろば 5. おわりに |
次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)は、急激な少子化の進行に対応して、次代の社会を担う子どもの健全な育成を支援するため、2005年に施行されました。この法律は10年間の時限立法でしたが、本年の法改正により、2035年3月末まで延長されることとなりました。
一般事業主行動計画(以下「行動計画」)とは、次世代法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間(2)目標(3)目標達成のための対策及びその実施時期を定めるものです。
常時雇用する労働者が100人を超える(=101人以上の)企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。なお、100人以下の企業では努力義務となっています。
◇数値目標の設定
今回の法改正では、行動計画に育児休業取得の状況(男性の育児休業等取得率)や労働時間の状況(フルタイム労働者の各月の時間外・休日労働時間数等)に関する数値目標を設定することが義務付けられました。
また、行動計画を効果的なものにするためには、自社の現状の課題に沿った内容を策定する必要があります。今回の法改正では、行動計画策定・変更時に、育児休業の取得状況や労働時間の状況を把握し、改善すべき事情を分析した上で、分析結果を勘案して新たな行動計画を策定または変更する「PDCAサイクルの確立」が求められることになりました。
図1 行動計画策定・変更時に育児休業等の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を義務付け
出典:厚生労働省リーフレット「次世代法の改正に伴い、くるみん認定、プラチナくるみん認定の認定基準等が改正されます」(※)
◇「くるみん」等の認定基準の見直し
「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」「トライくるみんマーク」は、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証です。今回の法改正では、これらの認定基準について、見直しが行われることとなりました。
表1 くるみん、プラチナくるみん、トライくるみん認定基準 <共通> (※)
・女性の育児休業等の取得に係る基準の見直し
育児休業等をすることができる女性有期雇用労働者の育児休業等取得率について「75%以上」の基準が設けられます。
・成果に関する具体的な目標を定めて実施する措置の選択肢の見直し
実施する措置の選択肢から「所定外労働の削減」が外れ、新たに「男性労働者の育児休業等の取得期間の延伸」が追加されます。
表2 くるみん、プラチナくるみん、トライくるみん認定基準 <認定種類別> (※)
・男性の育児休業等の取得に係る基準の見直し
男性労働者の育児休業等取得率、男性労働者の育児休業等・育児目的休暇の取得率の数値目標が、それぞれ引き上げられます(引き上げ後の数値は表2を参照)。
・働き方の見直しに係る基準の見直し
雇用する全てのフルタイム労働者一人当たりの各月ごとの法定時間外労働及び法定休日労働の合計時間数の基準が引き上げられます。
従来は、年齢にかかわらず「45時間未満」でしたが、改正後は、全てのフルタイム労働者で「30時間未満」、25〜39歳のフルタイム労働者で「45時間未満」となります。(※くるみん、プラチナくるみんが対象)
・能力向上又はキャリア形成支援の取組に係る計画の策定・実施に関する対象の見直し
能力向上、キャリア形成の支援のための取組に係る計画について、従来は「女性労働者」のみ対象でしたが、改正後は「労働者」となり、男女いずれも対象となります。
厚生労働省運営のウェブサイト「両立支援のひろば」では、策定した行動計画の公表、他社の計画の閲覧、「両立診断サイト」における自社の両立支援の取組状況のチェックなどができます。
改正次世代法の施行は2025年4月1日からです。自社の状況の把握には時間を要することもありますので、必要に応じ、現在の行動計画の内容を確認し、早めの取組みを進める必要があるでしょう。
私たち「みらいく」では、人を大切にする企業づくりの支援をしています。育児や介護に関する法改正への対応や、子育て中の従業員の雇用環境整備等でお悩みの事業主様は、ぜひご相談下さい。