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作成日:2024/10/08
これからの時代の人手不足への対応〜令和6年度版 労働経済白書〜



先日、「令和6年版 労働経済の分析(労働経済白書)」が公表されました。本記事では、特に「人手不足への対応」に関する部分を抜粋して紹介します。

 

目次
 1. 労働経済白書とは
 2. 人手不足の背景
 3. 産業別人手不足の現状    
 4. 人手不足への対応策
 5. 事例紹介
 6. おわりに


労働経済白書とは


「労働経済の分析(労働経済白書)」は、雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書です。第T部「労働経済の推移と特徴」では、2023年の労働経済をめぐる動向がまとめられています。第U部「人手不足への対応」では、近年、人手不足が重大な社会問題となりつつあることを踏まえ、我が国の人手不足の動向やその背景を分析し、人手不足への対応の方向性等が示されています。

 

 

 

 

人手不足の背景


「人手不足」という言葉をよく耳にしますが、具体的にはどのような状況を言うのでしょうか。労働経済白書においては、「企業の生産活動にあたって必要な労働力を充足できていない状況」との定義が示されています。この状況を判断するにあたっては、一般に、「有効求人倍率」や「完全失業率」が用いられます。

有効求人倍率」とは、ハローワークで受け付けた「求人数」と求職を申し込んだ「求職者数」の比率で、これが1を上回れば、企業が提出した「求人数」の総数が、登録された「求職者数」の総数を超えており、求職者一人に対して一つ以上の仕事の募集がある状態を示しています。

完全失業率」とは、労働力人口に占める完全失業者の割合であり、働く意欲がある者のうち、仕事に就けておらず、職探しを行っている者がどの程度かを示す指標です。過去半世紀を振り返ると、わが国では、1970年代前半(高度経済成長期末期)、1980年代後半〜1990年代前半(バブル経済期)、2010年代以降〜現在までの3期間で、人手不足が生じています。

 

表1 雇用情勢の推移(※)

 

人手不足の状態を表すのに「人手不足感」という言葉が使われることもあります。この判断指標としては、日本銀行が3か月ごとに実施している「全国企業短期経済観測調査」の中の「雇用人員判断D.I.」等があります。「雇用人員判断D.I.」とは、雇用人員が「過剰」と回答した企業の割合から、「不足」と回答した企業の割合を引いたもので、この値がマイナスになるほど「人手不足感が強い」といえます。

 

表2 雇用人員判断D.I.の推移(※)

 

現在、我が国は急速な人口の減少に直面しており、2050年代には総人口が1億人を割り、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は、2040年には35%弱まで上昇するものと見込まれています。

表3は、これまでの人口推計などをもとに、2023年時点から消費水準や高齢者の労働参加率が現在と変わらないものと仮定して試算した、将来の消費水準(総消費)と労働力の見通し(労働力供給)を示したものです。

 

表3 高齢化と人手不足(※)


これによると、総消費の低下は高齢化による社会全体の労働力供給の低下よりも低下幅は小さくなっています。これは、高齢者でも生活には一定の消費が伴う一方で、高齢者の引退は、時期などの差はあるものの、全ての人の職業人生において不可避的に生じるものであるためと考えられます。そのため、仮に今後、労働生産性の水準に現在から変化がないとすれば、更に人手不足に拍車がかかることが想定されます。

ただし、現在、時間当たりの労働生産性は2013〜2022年において年平均1.3%上昇しており、また、同期間の65歳以上の高齢者の労働参加率も20.5〜25.6%まで上昇する等、ここ10年間でみても、労働力供給は増加しています。今後、さらなる労働生産性や労働参加率の上昇に向けた取り組みが必要となるでしょう。

 

産業別人手不足の現状


人手不足は、どのような分野で、どの程度生じているのでしょうか。労働力の需要と供給の差を「労働力需給ギャップ」といいます。これがマイナスになると、供給不足(需要過多)、すなわち人手不足といえます。2017年以降、このマイナス傾向が目立っています。

 

表4 労働力需要・供給、ギャップの推移(※)

 

次に、産業別に労働力需給ギャップをみると、「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「医療、福祉」などの産業でマイナスの傾向が目立ちます。

特に、感染症の影響を大きく受けた「宿泊業,飲食サービス業」においては、労働力需給の回復途上にあり、インバウンド需要などもあって、マイナス幅が大きくなっています。

また、「製造業」「情報通信業」「医療,福祉」において、労働力需要が増加しています。ICT技術の発展等に伴う専門・技術人材への需要や、少子高齢化に伴う医療・介護従事者への需要の高まり等から、今後もこうした傾向が続くものと考えられています。

 

表5 産業別 労働力需要・供給、ギャップの推移(※)

 

人手不足への対応策


人手不足への対応策には、どのようなものがあるのでしょうか。特に人手不足が深刻であり、国民生活に密着している分野として「介護」と「小売・サービス」を取り上げ、それぞれについて分析が行われました。

表6は、公益財団法人 介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」の結果をもとに、介護事業所の取組みが人手不足感に与える影響を分析したものです。

 

表6 介護事業所の人手不足への対応の効果(※)

「***」は1%水準、「**」は5%水準、「*」は10%水準で有意であることを示す。

 

介護事業所においては、一定の賃金水準の確保や、相談体制の導入職員の負担を軽減する機器の導入などが、人手不足に効果的とされています。


 

  また、表7は、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「人手不足とその対応に係る調査」の結果をもとに、小売・サービス事業所の取組みが人手不足感に与える影響を分析したものです。

 

表7 小売・サービス事業所の人手不足への対応の効果(※) 
(※)表1〜表7の出典:「令和6年度 労働経済の分析-人手不足への対応
 
 

小売・サービス事業所では、一定の賃金水準の確保や、時間外労働の改善研修や労働環境の整備などが、人手不足に効果的とされています。

 

事例紹介

 

企業の人手不足への取組みの成功例についても紹介されています。

<グループホーム・有料老人ホーム運営会社の例>

 

・直接業務(介護)と間接業務(掃除・選択等)の分業制の導入

→直接業務は介護職員、間接業務は障害者やシルバー人材センターの高齢者が担当。介護職員が介護に専念できるようになり、双方の業務の質が向上した。

 

・日勤と夜勤の交代制(不規則な勤務)から、日勤専従者と夜勤専従者に変更

→応募者が増えた。職員のライフスタイルに応じた規則的な勤務、プライベートの充実に繋がり、病欠が8割近く減った。

 

・社内研修機関による介護技術の検定制度、面談やセルフキャリアドックの実施

→職員のモチベーションのアップ、介護現場における事故発生率低下、離職率の低下に繋がった。

 


 

おわりに


本記事では、令和6年度「労働経済の分析(労働経済白書)」から、「人手不足への対応」に関係する内容を抜粋して紹介しました。様々な業種で、人手不足に悩んでいる会社様は多いことと思います。人材の採用や定着、賃金制度等についてお悩みの事業主様は「みらいく」にご相談ください。

 


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