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作成日:2024/10/04
遺族年金制度の見直しが検討されています


共働き世帯の増加等の社会経済状況の変化への対応や、制度上の男女差の解消のため、20代から50代に死別した「子のない配偶者」に対する遺族厚生年金を有期年金化するなど、遺族年金制度について様々な見直しが検討されています。

目次
 1.はじめに
 2.近年の社会経済状況の変化
 3.現行の遺族年金制度
 4.見直しの方向性
 5.有期給付の拡大に伴う配慮措置     
 6.その他の見直し
 7.おわりに

 

はじめに


現行の遺族年金制度は、以前は一般的であった「夫が働き、専業主婦等の妻を扶養する」という家庭を想定して設計されており、性別により受給要件・内容に差が設けられている部分があります。しかし、現代では男女とも働く共働きの家庭が多くなっています。このような時代の変化に合わせて、遺族年金制度の見直しが検討されています。現行制度と見直し案の概要について解説します。

 

近年の社会経済状況の変化


昔は「夫が働き、専業主婦等の妻を扶養する」という家庭が一般的でした。そのため、夫と死別後の女性は、就労が難しく、自力では生計を維持することができないと考えられていました。遺族年金は、このような「性別による固定的役割分担」を念頭に置き、設計されてきました。

しかし、現代では、男女とも働く「共働き世帯」が中心であり、いわゆる専業主婦世帯は減少し続けています。女性の就業が進展し、40歳から59歳の中高齢期の就業率は、2040年(推計)にはいずれの世代でも80%台後半になると見込まれており、男女の賃金格差も縮小が見込まれています。現在の社会経済状況は、昔とはだいぶ変化しているといえます。

 

現行の遺族年金制度


まず現行の遺族年金制度について紹介します。遺族年金は、大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれます。

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等が死亡したときに、死亡した方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」に支給されるものです。

 

 


遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者等が死亡したときに、死亡した方に生計を維持されていた一定の遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母)のうち、優先順位の高い者に支給されます(図1)。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給できます。

 

               図1 遺族厚生年金の受給対象者と優先順位(出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」)

 

(※1)子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません。

(※2) 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子のない夫は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。

(※3) 父母または祖父母は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります。

 

 

 

 

 



先ほど述べた「性別による固定的役割分担」の考え方により、遺族厚生年金には、制度上の男女差が存在しています。

夫については、「妻が亡くなったとしても自らの就労により生計を立てることができるだろう」という考えの下で、 55 歳以上でないと遺族厚生年金の受給権が発生しません(支給開始は60歳から)。  

その一方で、妻については、生計を維持していた夫の死亡後「独力で生計を立てることが難しいだろう」という考えにより、55歳以上という要件が設けられていません。ただし、遺族厚生年金の受給権取得当時に、遺族基礎年金の受給権を取得しなかった(=子のない)30歳未満の妻は、5年間のみの有期年金となります(30歳に到達する日前に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合は、その消滅した日から5年間)。

 

                                   図2 現行制度における受給イメージ(※)

 

 

 

見直しの方向性


今回見直しの対象とされるのは、子のない世帯に対する遺族厚生年金です。20代から 50代までに死別した「子のない配偶者」に対する遺族厚生年金を、夫婦どちらも 5年間の有期給付とすることが検討されています。

具体的には、60歳未満の夫は「5年間の有期給付」とし、妻は「5年間有期給付」の対象年齢を、現在の「30歳未満」から時間をかけて段階的に引上げていくことが検討されています。

ただし、施行日前に受給権が発生している遺族厚生年金については、現行の制度を維持するとされています。また、有期給付の対象年齢は検討中であり、今後の変更はあり得ます。

 

図3 20代から50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金の見直しの方向性(※)

出典:厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて

 


有期給付の拡大に伴う配慮措置


 この制度の見直しにより「5年間の有期給付」となる対象者が拡大することになり、現行制度に比べると、年金の受給期間が短くなる方が増えると想定されます。

そこで、以下の配慮措置を講ずることにより、配偶者と死別直後の生活再建を支援するとともに、高齢期における生活保障への対応を行うことが検討されています。

 

・死亡時分割制度

現行制度の離婚分割を参考に、死亡者(例:夫)との婚姻期間中の厚生年金被保険者期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設が検討されています。分割が行われると、分割を受けた者(例:妻)の将来の老齢厚生年金額が増加します。

 

・収入要件の廃止

有期給付の遺族厚生年金の受給対象者を拡大するため、現行制度における生計維持要件のうち、収入要件の廃止が検討されています。

 

有期給付加算

現行制度の遺族厚生年金額(死亡した被保険者の老齢厚生年金の4分の3に相当する額)よりも金額を充実させるための有期給付加算(仮称)の創設が検討されています。

 

その他の見直し


男女差の解消等の観点から、一定の要件を満たす寡婦(夫と死別した女性)が支給対象とされている「中高齢寡婦加算」と「寡婦年金」について、段階的廃止が検討されています。

また、離婚の増加等、子を取り巻く家庭環境の変化を踏まえ、自らの選択によらない事情で子の遺族基礎年金が支給停止されることのないように、子に対する遺族基礎年金の「生計を同じくする父または母がある場合」の支給停止規定について、見直しが検討されています。



 

おわりに


今回は遺族年金制度の見直しについてご紹介しました。本記事で紹介した内容は、まだ検討段階のものです。厚生労働省では、さらに検討を重ねた上で来年の通常国会に必要な法案の提出を目指す方針です。

 

 


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