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作成日:2024/09/24
労使トラブル防止!労働条件の明示のポイント


従業員の募集、採用等の場面では、労働条件を適切な形で示すことが重要です。労働条件について、近年、特に気を付けたいポイントについて解説します。

 

目次
 1.はじめに
 2.法令上、明示すべき労働条件とは?  
 3.近年で特に注意したい労働条件
 4.おわりに



はじめに


働き方改革をきっかけとした労働者の就労意識の変化や、昨今の人材不足の流れの中で「労働条件」について注目が集まるようになりました。採用時に労働条件を明確にしておくことは、労使双方にとって大変重要です。労働条件が曖昧であると、優秀な人材が応募してこない、採用後に労使間のトラブルが発生するなどの様々なリスクがあるからです。

この記事では、まず、法令上明示すべき労働条件について確認した上で、近年特に注意したい、4つの労働条件(@残業時間 A就業場所や業務の変更の範囲 B副業・兼業 Cリモートワーク)について解説していきます。

 

法令上、明示すべき労働条件とは?


労働条件の明示について、法令ではどのように定められているのでしょうか。労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。具体的には、労働基準法施行規則第5条第1項に規定されている、以下の(1)から(14)の項目を明示する必要があります。

なお、(1)から(6)((5)の昇給に関する事項を除く)は、書面の交付により明示しなければなりません。労働者が希望した場合は、FAXやメール等の方法で明示することもできますが、書面として出力できるものに限られます。

 

(1)労働契約の期間に関する事項

(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

(3)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項(変更の範囲)

(4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項

(5)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

(6)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 

                                                                                                   

 

(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項

(8)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項

(9)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

(10)安全及び衛生に関する事項

(11)職業訓練に関する事項

(12)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

(13)表彰及び制裁に関する事項

(14)休職に関する事項                                                                                                       

 

 


以上の規定を踏まえた上で、会社の実態に合った内容で書面を作成し、交付するようにしましょう。

出典:厚生労働省「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。

 

 

近年で特に注意したい労働条件


また、以下の@〜Cは、近年、特に曖昧にできない労働条件だと言えます。採用後に認識の相違が生まれないよう、事前に十分な説明を行うことが大切です。

 

@残業時間

残業時間は、ワークライフバランスの観点等から、労働者(求職者)が最も関心を寄せる労働条件の一つです。36協定における時間外労働の上限は、原則として月45 時間です。この時間を超えるような見込残業時間の設定は控えた方がよいでしょう。統計によると、長時間労働による疲労の蓄積は、うつ・不安の発症と関連があることも示されており、労働者の健康面でも好ましくありません。できるだけ所定労働時間内で業務を終了できるように、業務の分担を見直しましょう。

✔ 残業の有無:残業があるか、ないか

✔ 平均残業時間:残業が平均して月何時間あるか

✔ 休日出勤:休日出勤の有無、頻度

✔ 固定残業制度:固定残業制度の有無、ある場合何時間分の残業代に相当するか

✔ 変形労働時間制、裁量労働制:1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、事業場外みなし労働時間制など、イレギュラーな制度があるか

✔ その他:残業に許可を要するか、始業前・終業後が残業扱いとなる基準など

 

A就業場所と業務の変更の範囲

2024年 4 月からの法改正により「就業場所と業務の変更の範囲」を書面で明示しなければならなくなりました。つまり、転勤等の対象となるか否か、転勤対象ならばどこに転勤する可能性があるかを、あらかじめ書面で知らせなければなりません。

また、職種を限定しない、いわゆる「総合職」として採用する場合などは、ゆくゆくは部署が変わる可能性も含めて知らせる必要があります。

近年では労働者側の交渉力が強くなり、「希望しないエリアに転勤をするくらいなら転職する」という意見も珍しくなくなりました。また、総合職採用から「ジョブ型雇用」へ移行しつつある流れも踏まえると、転勤や業種変更については、より一層の慎重な説明が求められるでしょう。

就業規則などで転勤や配置転換の可能性について規定しつつ、個人の希望やニーズも考慮しながら、柔軟に転勤や業務の変更をしていくことを心がけましょう。

 

 

B 副業・兼業(ダブルワーク)

「新卒で就職した企業に定年まで勤める」という日本型終身雇用が終焉に向かいつつある中、副業・兼業の可否は、今後の若年者の採用活動に大きく影響すると言われています。副業・兼業をする意向のある労働者の割合は、今後ますます増えていく傾向を考慮すると、副業・兼業の許可や届出について明確な基準を設けておくと良いでしょう。具体的には、就業規則において副業・兼業の項目を設けて、ルール化しておくことが望ましいです。

✔ 許可制または届出制とするか

✔ 副業NGの業種を設けるか:同業他社(会社と競業するもの)、ナイトワーク等(企業イメージを損なうもの)を禁止する等

✔ 限度時間を設けるか :労働時間は本業と合計して週◯◯時間までとする等

 

 

 

 

 

Cリモートワーク

リモートワークの可否も採用に大きく影響します。単に「リモートワーク可」という表示だけでは、使用者側と労働者側の認識の違いにより、採用後に様々な問題が発生してしまう可能性があります。あらかじめ、ルールを定めておいた方がよいでしょう。また、リモートワークを運用するためには、タスクの期限と品質管理の仕組みも重要です。労働者の働きぶりが見えない分、業務効率を落とさないための対策も考えておく必要があるでしょう。

✔ リモートワークの頻度:週〇日可能など

✔ リモートワークを許可する業務範囲

✔ 報告や連絡のルール

✔ 業務に使用する機材(パソコン等)の貸与や購入する場合の費用負担

✔ 機密情報保護のためのルール(個人情報の保護、ウイルス対策等)

 

 

 

 

おわりに


働き方の多様化、労働者の意識の変化等により、労働条件も「曖昧な内容」では許されなくなりつつあります。昔作った書類(例:求人票や労働条件通知書)や就業規則をずっと使い回している場合、会社の実態や、現行の法律に沿った内容になっていないかもしれません。労働条件をしっかり整備することで、応募者の増加、採用後の定着率アップ、労使トラブルの予防に繋がります。この機会に労働条件の見直しをしてみませんか。「みらいく」では事業主様からのご相談をお待ちしております。

 


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