厚生労働省では、毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、集中的・重点的に啓発を行っています。
目次 1. はじめに 2. 職場における健康診断とは 3. 健康診断の実施率は小規模事業場で低い傾向あり 4. 保険者との連携(健診結果の提供) 5. おわりに |
厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施、その結果についての医師の意見聴取、医師の意見を踏まえた就業上の措置の実施について、事業者の皆様に改めて徹底していただくことを促すため、毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、啓発を行っています。
職場における健康診断は、労働者の健康状況を把握するために重要です。労働者個人にとっては、疾病の早期発見、健康確保のための健康意識の向上等の意義があります。事業者にとっては、健全な労働力の確保のため、医師の意見を勘案したうえで、労働者が当該作業に就業してよいか(就業の可否)、当該作業に引き続き従事してよいか(適正配置)などを判断するためのものです。
事業者は労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。事業者に実施が義務付けられている健康診断には、以下の種類があります(表1)。
表1 健康診断の種類
(出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
事業者には「健康診断の実施」だけでなく、「有所見者に対する医師からの意見聴取」や「医師の意見を勘案した必要な事後措置の実施」なども義務づけられています。しかしながら、令和4年労働安全衛生調査によると、特に小規模事業場において、健診実施率、医師意見聴取率ともに、低い傾向がみられました(表2)。
表2 事業場規模別 健康診断及び医師意見聴取の実施割合
(出典:厚生労働省リーフレット「9月は職場の健康診断実施強化月間です」)
◇有所見者に対する医師からの意見聴取とは
定期健康診断等を実施した結果、異常の所見があると診断された労働者については、医師から意見を聴く必要があります。
・意見聴取は、健康診断実施日から「3か月以内」に行う必要があります。
・意見聴取は、健康診断個人票の「医師の意見」欄に当該意見を記入するように求めることにより行います。
図1 医師の意見とは
(出典:静岡労働局「健康診断実施後の措置について」)
事業者は、必要に応じ、意見を聴く医師等に対し、労働者に係る作業環境、労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況、過去の健康診断の結果等に関する情報及び職場巡視の機会を提供します。
また、健康診断の結果のみでは、労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でない場合には、医師等と労働者との面接の機会を提供することが適当です。
◇意見を聴取する医師
産業医の選任義務のある事業場(=労働者数が常時50人以上の事業場)においては、その事業場の産業医から意見を聴くことが適当です。
一方、産業医の選任義務のない事業場(=労働者数50人未満の小規模事業場)においては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が相談等に応じる地域産業保健センター、あるいは健診を実施した健診機関、お近くの医療機関等にご相談ください。
地域産業保健センター(略称「地さんぽ」)では、小規模事業場への支援として、産業医・保健師を配置し、健診結果についての医師からの意見聴取、長時間労働者・高ストレス者に対する面接指導、産業医等の事業場訪問による保健指導、労働者の健康に係る各種相談などの対応をしています。
◇事後措置とは
事業者は、医師等の意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、必要な措置(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等)の措置を講ずる必要があります。なお、事後措置の詳細は「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(*)」をご確認ください。
*:(https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K170417K0020.pdf)
常時使用する労働者への年1回の定期健康診断の実施や、有所見者に対する医師からの意見聴取、医師の意見に基づいた必要な事後措置の実施は、事業者の義務となっています。大切な従業員が健康で長く働いてくれることは、会社の持続的な成長にも繋がります。健康診断を適切に実施し、快適な職場環境づくりに努めていきましょう。