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作成日:2024/09/05
2025年4月建設業の安全衛生対策に関する保護措置の対象が拡大されます


2025
4月から、建設業の安全衛生対策に関する保護措置の対象が拡大されることになりました。建設業における労働災害の現状と法改正の内容について解説します。

目次
 1. はじめに
 2. 危険が伴う建設現場での作業
 3. 建設業における安全衛生管理体制
 4. 安全衛生対策に関する保護措置の対象拡大(2025年4月〜)      
 5. おわりに

 

はじめ


建設業の労働災害による2023年の死亡者数は、ここ約50年のあいだで過去最少となりました。しかしながら、全産業に占める死亡者の割合は、依然として最も高い状況が継続しています。

2023年には、静岡県の橋梁建設工事において発生した架設桁の落下災害(労働者8名が被災し2名が死亡)、東京都のビル建築現場において発生した鉄骨の落下災害(労働者6名が被災し2名が死亡)等、一度に多数の労働者が被災する重大な災害も発生しています。

今後は、労働災害の減少に向けて、労働災害防止対策を更に推進することが求められています。

 

危険が伴う建設現場での作業


建設業の2023年の労働災害による死亡者数は、223人でした。これは、全業種の約29.5を占めており、全産業の中で最も多いです(表1)。(新型コロナウイルス感染症への罹患による労働災害を除く)

                                                                                              表1 令和5年 業種別労働災害発生状況(確定値)
                                                                                             出典:厚生労働省「令和5年 労働災害発生状況

 

また、死亡労働災害を種類別にみると、「墜落・転落」、「交通事故」、「はさまれ・巻き込まれ」の順に多くなっています(表2)。

建設現場では、重機の使用、山間部や河川などの危険な場所や、高所など足場の不安定な場所での作業も多くあります。建設現場で働く人々は、常に危険と隣り合わせの環境で作業をしているといえます。

 

 

2 令和5年 事故の型別労働災害発生状況(確定値)出典:厚生労働省「令和5年 労働災害発生状況

 

建設業における安全衛生管理体制


建設業においては、発注者からゼネコン(総合建設業者)などに仕事が発注され、その仕事の一部を、さらに別の事業者が請け負うことがよくあります。

発注者から仕事を受けた事業者を「元請(もとうけ)事業者」、元請事業者から仕事を請け負う事業者を「下請(したうけ)事業者」といいます。ときには下請事業者の仕事の一部を、さらに別の下請事業者が請け負い、二次、三次の下請事業者等によって作業が行われることもあります(図1)。

図1 発注者と請負人(出典:厚生労働省 職場の安全サイト「統括安全衛生責任者」)

 

建設現場での作業は、作業そのものの危険度が高いことに加え、同一の場所で、複数の事業者に仕事を請け負わせることが多いことから、施行体制の複雑化によって、安全管理への影響や弊害が生じるおそれもあります。

このような建設現場での労働災害を防止するため、法令では、事業者に対して、安全衛生管理体制の確立、労働災害を防止するための具体的な措置の実施などが義務付けられています。

  

 

安全衛生対策に関する保護措置の対象拡大(2025年4月〜)


建設現場で働く人は、自社の従業員に限られません。一人親方や、他社の労働者、資材搬入業者、警備員など、事業者との雇用契約関係によらず働いている方も多くいらっしゃいます。建設現場の労働災害を防止するためには、これらの人々の安全を守ることも大変重要です。

労働安全衛生法に基づく省令改正により、20254月からは、同じ現場で働くすべての人に対し、危険箇所等での作業に対する措置を行うことが義務化されます(図2)。

 

    

                                                                           図2 保護措置義務の拡大

(出典)厚生労働省『20254月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について、以下の12を対象とする保護措置が義務付けられます

 

                                                       

 

 

 

【改正@】退避や立入禁止等の措置の対象範囲の拡大

危険箇所等での作業に対する措置(事故発生時等の退避、危険箇所への立入禁止等、火気使用禁止、悪天候時の作業禁止など)における保護の対象が、従業員だけでなく、同じ現場で働くすべての人(一人親方や他社の従業員、資材搬入業者、警備員など)に拡大されます。

※危険箇所等における作業を、重層請負により複数の事業者が共同で行っている場合等、同一場所についてこれらの義務が複数の事業者に課されているときは、立入禁止の表示や掲示を事業者ごとに複数行う必要はなく、共同で行っても差し支えありません。

 

【改正A】下請事業者や一人親方等への周知の義務化

立入禁止とする必要があるような危険箇所等で行う作業の一部を、下請事業者や一人親方に行わせる場合には、保護具等を使用する必要がある旨の周知が義務化されます。

事業者の請負人に対する周知は、個々の事業者が請負契約の相手方に対して行います。すなわち、一次下請は二次下請に対する義務を負い、二次下請が三次下請に対する義務を負います。

なお、今回の改正で周知が義務付けられるのは「立入禁止とする必要があるような危険箇所で例外的に作業を行わせる場面」に限定されています。

しかし、それ以外であっても、以下の場面については、保護具等の使用が必要である旨や、特定の作業手順、作業方法によらなければならない旨を周知することが推奨されます。

・作業に応じた適切な保護具等を労働者に使用させることが義務付けられている場面

・特定の作業手順や作業方法によって作業を行わせることが義務付けられている場面

 

おわりに


建設現場では、様々な立場の方が危険と隣り合わせで業務に従事しています。事業者には、これまでも自社で雇用する従業員の安全と健康の確保が義務付けられていましたが、省令改正によって、今後は従業員以外の方に対しても、一定の保護措置や周知を行うことが義務付けられることになりました。この改正により、労働災害の未然防止や、建設現場の安全性の向上に繋がることが期待されます。

 


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