先日、中央最低賃金審議会において2024年度の最低賃金引き上げの議論が行われ、今年度の地域別最低賃金引上げ額の目安は「50円」とされました。これを受けて、各都道府県において最低賃金の引上げが決定されています。
目次 1.はじめに 2.過去の最低賃金の推移 3.最低賃金引き上げ額の目安 4.最低賃金に関するFAQ 5.最低賃金への対策 6.おわりに |
地域別最低賃金は、全国的な整合性を図るため、毎年、中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対し、金額改定のための引上げ額の「目安」が提示されます。
地方最低賃金審議会では、その「目安」を参考にしながら、地域の実情に応じた審議が行われ、地域別最低賃金が決定されます。
これまでの最低賃金上昇の推移から、今後の予測をするとともに、企業における最低賃金への対応のポイントについて解説します。
最低賃金の全国加重平均は、上昇傾向が続いています(表1)。
表1 地域別最低賃金の全国加重平均額の推移
出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国加重平均と引上げ率の推移」
昨年(令和5年)の最低賃金改定時には、全国加重平均が1,000円に到達したことが話題になりました。日本では、先進諸外国と比較して名目賃金(物価変動を考慮しない自国通貨による賃金)が上昇していないことや、為替の影響などにより、さらなる賃金上昇が必要であるとの見方が強く、当面、この上昇傾向は続いていくと考えられます。
最低賃金引上げ額の「目安」は、都道府県の経済実態に応じ、全都道府県を「A・B・C」の3ランクに分けて、中央最低賃金審議会より提示されます。現在、Aランクは6都府県、Bランクは28道府県、Cランクは13県となっています(表2)。
今年は、引き続く物価高や為替の影響により、引上げ額の目安は、A・B・Cいずれのランクにおいても「50円」との答申が取りまとめられました(令和6年7月25日発表)。
表2 各都道府県に適用される目安のランク(出典:厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」)
各地方最低賃金審議会では、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。
Q.最低賃金より低い賃金で契約した場合は、どうなりますか?
最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
Q.使用者が最低賃金を支払っていない場合には、どうなりますか?
使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。
なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
Q.「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」とは、なんですか?
「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
「特定(産業別)最低賃金」とは、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使が基幹的労働者を対象として、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されており、全国で224件の最低賃金が定められています(令和6年3月末現在)。
(出典:厚生労働省「必ずチェック最低賃金」)
最低賃金の引上げは、企業にとっては人件費の増加に繋がるのも事実です。企業は最低賃金引上げに対して、どのように対応したらよいのでしょうか。
◇自社の給与が最低賃金を下回らないかを確認する
まず、自社の給与が、本年10月から適用される新しい最低賃金を下回らないかを確認します。もし最低賃金を下回ることとなる場合は、給与の見直しを行います。給与の引き上げによって増える費用や、社会保険料の事業主負担分の金額などを試算し、今後の対応を検討しましょう。従業員数や雇用時間の見直し、求人内容の見直しが必要になる可能性もあります。
◇売上を上げる(生産性向上、従業員のスキル向上)
業務プロセスの見直し、設備投資によって、業務の効率化、生産性向上を図り、売上を上げるという方法も考えられます。
また、最低賃金上昇に伴い、賃上げが行われると、従業員の仕事に対するモチベーションも上がります。このような機会をうまく活用し、従業員のスキル向上を図ることができれば、売上に繋げられるかもしれません。業務に関連する研修や外部セミナーの受講を勧奨するのもよいでしょう。
◇労働時間を短縮し、人件費上昇を抑える
労働時間を短縮し、人件費上昇を抑制するという方法も考えられます。残業が多い企業では、不要な残業の削減について検討するのも良いでしょう。
残業を減らすには、例えば、「ノー残業デー」を設ける、一定の時間でパソコンをシャットダウンする仕組みを設ける、残業を承認制にするなどの方法が有効な場合があります。
本年10月1日からの最低賃金について、中央最低賃金審議会では「50円UP」という目安が示されました。これを受けて、各都道府県ごとの最低賃金が決定されており、中には50円以上の上昇を決定した都道府県もあるようです。
最低賃金の上昇に伴い、給与を支払う企業側の負担が増加するのも事実ですが、最低賃金は法律で定められた事項である以上、すべての事業主が守らなければなりません。
今後も「最低賃金の上昇は毎年続いていく」という前提で、先を見据えた労務管理体制を検討した方が良いでしょう。
最低賃金への対応等に関してお悩みの事業主様は、「みらいく」にご相談ください。