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作成日:2024/08/19
人事異動のメリットとデメリット、トラブルを回避するためのポイント


人事異動の裁量権は企業側にありますが、どのような人事異動でも自由に命じられるとは限りません。労働契約上の根拠がない場合や、従業員の個別の状況を考えない人事異動は、労使トラブルの火種となる恐れもあります。一方、人事異動を正しく運用できれば、企業には業務の属人化の防止や組織の活性化、従業員には新たなキャリア形成の機会の獲得などのメリットが生まれます。人事異動におけるメリットとデメリット、トラブルを回避するための注意点について解説します。

 

目次
 1. 人事異動とは      
 2. 人事異動によるメリットとデメリット           
 3. 人事権の濫用とは
 4. 近年の傾向
 5. 人事異動におけるトラブルを避けるには   
 6. おわりに



人事異動とは


人事異動とは、企業が従業員に対して、勤務地や役職、職種などの変更を命じることです。人事異動には、転勤、職種変更、部署異動、昇格、降格、出向、転籍など、様々な種類があります。
基本的に、企業の就業規則において根拠規定が定められている場合には、ほとんどの人事異動で企業側の裁量権が認められます。


 
               図1 人事異動に関する規定の例(出典:厚生労働省「モデル就業規則」)

 

 

人事異動によるメリットとデメリット


人事異動には、企業と従業員の双方にメリットがある場合もありますが、デメリットとなる場合もあります。それぞれについて解説します。

 

<メリット>

・経営方針に合わせた人材の配置ができる

企業がこれから注力していきたい事業の人員を増員する際、新たに従業員の採用を行うと費用がかかります。しかし、人事異動ができれば、既存の人員で対処することができます。また、企業が従業員の適性を踏まえて人事異動を行うことで、適材適所の配置が実現し、従業員の生産性の向上も期待できます。

 

・業務の属人化を防止できる

長年、同じ従業員だけが業務を担当していると、特定の従業員しか業務を把握していないという、いわゆる「業務の属人化」が起こりがちです。これは、特定の従業員に依存した状態であり、長期的に見ると、業務の生産性の低下を招く恐れがあります。例えば、その従業員が急に休んだ時に業務が停滞する、急に退職した際に他の従業員が困ってしまう、組織にノウハウが蓄積されないなどの問題です。人事異動によって、業務の属人化が解消され、業務プロセスの整理、マニュアル化などが進めば、組織全体としての生産性が向上します。また、不正の予防にも繋がると考えられます。

 

・従業員のキャリア形成やスキルアップに繋がる

人事異動で新たな業務に就くことは、従業員が新たなスキルを獲得する機会や、その後のキャリアを考えるきっかけにもなります。このことは従業員のやる気やモチベーションの向上にも繋がるかもしれません。

 

<デメリット>

・希望と異なる人事異動により、従業員のモチベーションが低下する

人事異動の内容によっては、従業員のモチベーションや生産性が低下することもあり得ます。従業員のモチベーション低下は離職の原因になり、企業の戦力ダウンにもつながってしまいます。

 

・従業員の私生活への影響が大きい

転居を伴う人事異動は、従業員の生活に大きな影響を与え、結婚・妊娠・出産・育児・介護に支障をきたし、継続就業の妨げになることがあります。

 

・人事異動によるトラブルが起こる場合もある

人事異動によって労使トラブルに発展し、裁判の結果、その人事異動が「人事権の濫用」であり不当であると認められると、多額の賠償金を支払わなければならないというリスクがあります。

 

 

人事権の濫用とは


人事権には、「配転命令権」「出向命令権」「懲戒権」「解雇権」などがあります。
人事権の行使には、労働基準法や男女雇用機会均等法、労働契約法、就業規則などの様々な法的規制が関わってきます。法律や個別の労働契約の内容に反する人事異動や、従業員のキャリア形成を不当に侵害するような人事異動、嫌がらせや報復人事、従業員の家族状況(例:育児、介護)等に一切配慮をしない人事異動は、人事権の濫用とみなされる場合もあるため、注意が必要です。

 

<人事権の濫用とみなされる場合の例>

・職種特定の合意があった場合

・業務上の必要性がない場合

・不当な目的がある場合

・労働者に通常受忍すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合

 

近年の傾向


これまでは、転勤や職種の変更を含む人事異動が企業の一存で決められることが多くありました。
しかし、近年では「ワークライフバランス」の考え方が浸透し、法律でもワークライフバランスに配慮した契約の締結が求められています。期間の定めのない契約であっても、労働契約の締結時点で勤務地や職種などを限定した「多様な正社員」といわれる雇用区分を希望する労働者も増えてきています。
人事異動は従業員の私生活に少なからず影響を及ぼすことから、可能な限りしっかりと説明をしたうえで、個別に合意を得ることをおすすめします。

 

人事異動におけるトラブルを避けるには


人事異動におけるトラブルを回避するために、企業はどうしたらよいのでしょうか。

以下、3つのポイントから解説します。

 

@     自社の制度や従業員との契約内容を確認する

人事異動を行う前に、自社の就業規則における異動についての定めや、個々の従業員との契約内容について、改めて確認することをおすすめします。また、20244月からの法改正により、労働契約の締結や更新時には、「就業場所」や「業務の変更」の範囲を労働者に明示しなければならないことになりました。自社の雇用契約書(労働条件通知書)が法改正に対応したものとなっているか、見直しが必要です。

     

図2 最低限明示しなければならない労働条件

(出典:厚生労働省「2024(令和6)年4月1日施行 改正職業安定法施行規則 企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)

 

A     採用時にあらかじめ人事異動についての認識を共有する

人事異動の可能性がある企業の場合は、会社説明会や採用面接の際に必ず伝えましょう。従業員は「異動の可能性がある」という心構えができます。

転勤については、その会社の規模や事業エリアによっても異なりますが、例えば、複数の都道府県に支店や営業所を持つような企業の場合、いわゆる正社員は、人事異動を前提にした採用であることも多いかもしれません。

しかし、特に新入社員や若手社員は、人事異動について理解が足りず、突然の異動によって退職するケースも珍しくありません。このようなトラブルを避けるために、事前によく説明しておくことが大切です。

 

B     従業員とのコミュニケーションを取る

人事異動は、従業員にとって労働環境が変わる大きなイベントです。面談等を通じて、本人の希望やライフプラン、キャリアの展望などを聞き、従業員が納得できる人事異動の実現を目指しましょう。仮に従業員の希望通りの人事異動を実現できないとしても、その人事異動によって従業員にどのようなメリットや成長の機会が生まれるのかを説明し、理解してもらうことが大切です。

 

おわりに


人事異動の最終決定権は企業側にありますが、働き方に対する意識が変化しているなか、従業員の状況や個別の契約内容などを考慮した人事異動を行わなければ、労使間のトラブルや法的な問題に繋がる可能性もあります。
「適材適所」の観点で人事異動を行い、従業員のモチベーションや企業の生産性を向上させる方法として活用することをおすすめします。
人事異動に関してお悩みの事業主様は「みらいく」にご相談ください。

 


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