作成日:2024/07/22
連日の猛暑に負けないための熱中症対策
皆様の職場では、熱中症対策をしていますか?熱中症は、屋外はもちろん、室内でも発生することがあり、業種や職種に関係なく対策が必要です。また、熱中症のピークは8月と言われていますが、それ以外の月でも決して油断はできません。今回は職場における熱中症予防のポイントについて解説します。
目次 1.熱中症とは 2.あらゆる業種で熱中症対策が必要 3.職場での熱中症予防対策 3.1.ポイント@前日のチェック 3.2.ポイントA仕事前のチェック 3.3.ポイントB仕事中のチェック 4.熱中症が疑われる場合の応急処置 5.従業員の異変に気付く 6.高年齢者や持病がある方への配慮 7.暑熱順化で暑さに強くなろう! 8.おわりに
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熱中症とは
熱中症とは、高温多湿な環境に身体が慣れずに、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体内の調整機能が破綻して発症する症状をいいます。一般的な症状としては、めまい、吐き気、意識障害などが知られています。
熱中症の重症度は、以下の通り「T度」から「V度」に分かれています。T度は軽度の症状とされており、現場での適切な対応があれば重症化が防げ、症状改善ができる段階ですが、U度・V度では、医療機関への搬送が必要です。
表1 熱中症の症状と重症度分類(※)
熱中症が発生しやすい仕事には、どんなものがあるのでしょうか。以下は、2013年から2022年までの熱中症の発生者(累計値)です。業種別では、建設業・製造業・運送業・商業・警備業などで多くなっています。
表2 職場で熱中症になった人(死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数)(※)
例えば、屋外の建設現場などでは、直射日光が当たる、養生シートなどで風通しが悪い、重量物を運ぶ、休憩が取りづらい(休憩所が遠い・交代要員がいない)…などの理由から、熱中症が発生しやすいと言われています。
また、宅配・運送・引越など、重量物を取り扱う作業では、特に体に負荷がかかりがちです。休憩を取り、こまめに水分補給を行うことが大切です。
とはいえ、熱中症対策が必要なのは、建設業や運送業などに限られません。熱中症は屋内や屋外に関係なく、暑ければどこでも発症する可能性がありますので、デスクワークが中心の事務職でも、油断はできません。全ての業種・職種で熱中症対策が必要です。
熱中症を予防するには3つのポイントがあります。
【ポイント@:前日のチェック】
・仕事前日の飲酒は控えめに
仕事前日の飲酒は控えめにしましょう。飲みすぎた翌日は、アルコールの利尿作用で脱水状態になりやすいです。
・ぐっすり眠る
仕事の前日はぐっすり眠ることも大切です。夏は寝苦しくて、睡眠時間が短くなりやすい傾向がありますが、質の良い睡眠をとれるように工夫しましょう。
・熱中症警戒アラートの確認
熱中症警戒アラートは、前日夕方または当日早朝に、都道府県ごとに発表されます。前日の夕方の時点で「熱中症警戒アラート」が出ている場合、状況次第で、翌日の作業を見直すことも検討しましょう。
【ポイントA:仕事前のチェック】
・よく眠れたか?
寝不足だと、体温調整機能が低下してしまいます。
・食事をしたか?
食事で水分、塩分、糖質などを摂取することも熱中症予防につながります。
・体調は良いか?
体調が悪い場合は、無理をせず申し出た方がよいでしょう。
持病のある方は服薬の確認も忘れないようにしましょう。
・二日酔いをしていないか?
もし二日酔いの場合、既に脱水状態と考えられます。
・熱中症警戒アラートの確認
当日の朝に、熱中症警戒アラートが発表された場合は、状況次第で、作業の段取りを見直すことも検討しましょう。
【ポイントB:仕事中のチェック】
・単独作業を避け、声を掛け合う
周りに人がいない状況で熱中症になり、適切な対応が遅れてしまうと、時には命にもかかわります。一人作業の場合は、周囲の人が声を掛けることが大切です。
・監督者は現場パトロール
管理者の方は、従業員に声を掛け、普段と様子の違う人、体調の悪そうな人がいないかを把握しましょう。
・水分、塩分の補給
のどが渇いたと感じなくても、こまめに水分と塩分をとることが大切です。このとき重要なことは、⽔分と塩分を⼀緒に補給することです。⼤量に汗をかき、⽔分と塩分が減った状態のときに⽔だけを補給すると、のどの渇きは消失しますが、⾃覚症状がないまま、体内の塩分割合が低下して、熱中症になることがあります。逆に、水分を取らず、塩飴だけを舐めても、効果はありません。
・こまめに休憩
休憩中は、直射日光を避け、なるべく日陰で、体を冷やすようにしましょう。
従業員の熱中症が疑われる場合は、まず呼びかけに応答するか(意識があるか)確認し、その反応に応じた適切な処置を行ってください。
【意識があるとき】
・涼しい場所へ移動させ、身体を楽な姿勢にさせる
・スポーツドリンクや薄い食塩水など水分と塩分を摂取する
(ただし、水分を吐くときは無理に飲ませてはいけません)
・衣服をゆるめ、身体を冷やす
熱中症が疑われる従業員を一人で休ませると、症状が悪化する可能性もありますので、必ず誰かが付き添ってください。水分を自力で摂取できないときや、症状が改善しないときは、状況を知っている者が付き添い、医療機関を受診してください。
【意識がないとき】
・呼びかけて反応がないときは、すぐに救急車を呼ぶ
・涼しい場所へ移動させ、身体を横にする
・衣服をゆるめ、首、わきの下、太もものつけ根を集中的に冷やす
意識がないときに水を飲ませると、窒息する危険があるので、飲ませてはいけません。
熱中症はとても身近な災害です。普段から自身の体調を管理するのはもちろん、従業員同士がお互いに声をかけ合うことも大切です。
熱中症の初期症状が出ていても「仕事を一旦止めて休む」ことを選択せず、無理に仕事を続けた結果、熱中症が重症化してしまうケースもあります。体調がいつもと違うと感じたら、熱中症を疑ってみましょう。ご自身や周囲の異変に気付いたら、すぐに応急手当ができるように、『熱中症「「応急手当」カード」も活用するとよいでしょう。
図1 熱中症「応急手当」カード(※)
厚生労働省のサイトで印刷用、携帯用の画像がダウンロードできます。
https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/
熱中症は年代を問わず注意が必要ですが、特に高年齢者は、加齢に伴う心身機能低下により、脱水症状を起こしやすいです。また、持病のある方も、薬の作用で、発汗が抑制され、脱水症状を起こしやすい場合がありますので、注意が必要です。