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作成日:2024/06/24
SNSで話題「会社の飲み会に残業代出ますか?」

 

X(旧Twitter)などのSNS で、「会社の飲み会に残業代は出るのか」という従業員と社長とのやり取りの動画が話題になっています。その動画内に登場する社長は「残業代は出ない。強制参加の業務ではないので来なくてもいい」と答えていますが、同時に「業務外では同僚とコミュニケーションをとりたくないという発言は敵を増やすだけなのであなたの得にならないよ」と従業員を諭していました。
今回は、会社の飲み会に残業代を支払うべきかについて法律的な観点で解説するとともに、このような問題にどう対処すべきかを考察します。
 

◆飲み会に残業代は出ない?
会社の飲み会や懇親会、忘年会、社員旅行、運動会などの社内イベントは、就業時間外や休日に行われる場合もあります。
これらは、職場の方との親睦を深める機会でもあり、楽しみにしているという方がいる一方で、「気を遣う上司と飲みたくない」「自分のプライベートの時間を削られたくない」などの声も聞かれます。
社内の人間関係により、参加を断れない雰囲気を感じている、人事評価への影響を気にしている等の理由で「やむを得ず」参加している人にとっては、「残業代のつかない労働」のように感じているかもしれません。
 
◆労働時間にあたるかの判断基準
このような社内イベントは「労働時間」に当たらないのでしょうか。
労働基準法における労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。
具体的には、以下のような時間です。

 使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間

 使用者の明示または黙示の指示に基づき、参加等が事実上強制されている時間  
 


これらは、就業規則等の規定に左右されず、客観的に見て労働者の行為が使用者から義務付けられたものと言えるか等によって個別具体的に判断されます。
 
社内イベントが以下のようなルールで運営される場合、それらは業務であり、そのイベントの時間(場合によっては移動時間も含めて)は労働時間であると判断される可能性が高くなります。

・会社が開催場所を指定している
・会社から全員参加である旨が通達されている
・不参加の場合に理由を述べる必要がある
・不参加の場合に人事評価が下がる
・「新入社員歓迎会」などと銘打たれており実質的に不参加と言いにくい
・直属の上司から参加するように圧力がある
 
逆に考えると、飲み会等が業務ではないため残業代を支払わない、と会社が主張するためには、「自由参加であること」「人事評価に影響しないこと」を明確に伝えるとともに、実質的に断りにくい状況になっていないか気を配る必要があるでしょう。
過去には、くも膜下出血で死亡した労働者の労災認定をめぐって、「リーダーという立場上断れなかった飲み会の時間」を残業時間と認めたケースや、新入社員歓迎会の2 次会でのセクハラ認定について「飲み会が業務の延長」と判断された例などシビアなものがあります。今後は、価値観の多様化によって、頻繁にこのような「飲み会残業代問題」が発生する可能性があるかもしれません。
 
◆実際の対応策
従業員から「飲み会に残業代は出ますか?」と質問された場面を想定して、会社の飲み会文化を継続するか否かという観点から対応策を考察します。
 
@ 飲み会文化を継続したい場合
会社として飲み会を継続する場合は、自由参加であり査定に影響しないことを明確に説明して誘い、断られても嫌な顔をしないのが大切です。あるいは飲み会を業務とみなして残業代を支払い、打ち解けたコミュニケーションをする会社行事として堂々と開催する方法もあるでしょう。なお、飲み会ではセクハラ・パワハラ・アルハラ(アルコールハラスメント)を厳格に禁じる企業姿勢も大切です。
 
A 飲み会文化を継続しない場合
会社主導の飲み会を辞めてしまう選択肢もあります。その場合、飲み会の代わりの従業員間のコミュニケーションの場を会社が用意する方法も検討できます。例えば社内にレクリエーションスペースや喫茶スペースを用意したり、社内SNS を導入してコミュニケーションを促したりといった代替案が考えられます。
また、イベントの時間帯を変えることも考えられます。夜の飲み会ではなく、ランチ会にしたり、会社がランチ代を一定金額まで負担(または補助)するなどの例もあります。育児等で飲み会への参加が難しい従業員や、プライベートの時間を確保したい従業員などは、昼の時間であれば時間的拘束も短いため、より参加しやすいかもしれません。
 
◆会社と従業員の認識の違いに注意
先日、あるSNSを見ていたところ、興味深い投稿がありました。ある会社で、社内イベントについてのアンケートを行ったところ「参加したくない」と「どちらかといえば参加したくない」の合計数が7割を超えたため、経営者の方がびっくりしたそうです。結局、従業員の多くの意見を反映し、そのイベントは取りやめるとのことでした。
このように、会社としては「従業員への福利厚生」として「良いことをしている」いう認識で行っていたことが、従業員としては、あまり有り難く思っていない場合もあるようです。会社側と従業員側、双方の認識のギャップを埋めるために、従業員の意見を聴いてみることも良いかもしれません。
 
◆おわりに
 「会社の飲み会に残業代は出るか?」という質問は、ひと昔前では考えられなかったと思います。時代の変化とともに、多様な価値観が発信されるようになったことの現れかもしれません。法律上は、一定の要件を満たす場合、会社のイベントが労働時間に該当し、残業代の支払いが必要になる場合もありえます。このような法律上の原則を理解した上で、会社の実態にあわせて柔軟に対応していく必要があります。
 


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