3月の厚生労働省告示により現物給与の価額(食事)が改正され、令和6年(2024年)4月1日より適用されました。
今年度の価額を紹介するとともに、具体的な現物給与の計算方法について解説します。
厚生年金保険および健康保険の被保険者が、勤務する事業所より労働の対償として「現物」で支給されるものがある場合は、その現物を通貨に換算し報酬に合算のうえ、保険料額算定の基礎となる標準報酬月額を求めることになります。
現物で支給されるものが、食事や住居である場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。また、自社製品等、その他のもので支給される場合は、原則として時価に換算します。
現物給与価額は、その地方の時価によって、厚生労働大臣が定めることとされています。
@ 住居が供与される場合
表1 都道府県別 住居の利益の額(抜粋)
(現物給与の価額改定について(令和6年度)(厚生労働省))
<具体的な計算方法>
住居の現物給与価額は、実際の家賃に関わらず、居住スペースの広さに応じて決められます。居住スペースとは、玄関、廊下、浴室、トイレ、バルコニー、クローゼット、洗面所などを除いたものをいいます。また、1畳=1.65uに換算して計算します。
※水色の部分が「居住スペース」です。
なお、家賃等を一部本人が負担している場合は、現物給与の価額から徴収額(自己負担額)を差し引いた額が、現物給与価額となります。
また、自己負担額が現物給与の価額を上回っている場合は、会社が住居の価額を負担しているとはいえず、現物給与はないものと取り扱います。
都道府県は、住居の所在地ではなく、事業所の所在地で判断します。
(例)静岡県内の事業所に雇用される労働者が、居住スペース22畳の社宅に住んでいる場合
現物給与に相当する価額 1,460円×22=32,120円
・従業員の自己負担額が20,000円の場合
→現物給与は32,120円-20,000円=12,120円となります。
・従業員の自己負担額が35,000円の場合
→現物給与は0円となります。
A 食事が供与される場合
表2 都道府県別 食事で支払われる報酬等(抜粋)
(現物給与の価額改定について(令和6年度)(厚生労働省))
<具体的な計算方法>
食事の現物給与の計算は、自己負担額が現物給与価額の「3分の2以上」であるか否かによって異なります。
(例)静岡県内の事業所で昼食のみ提供されている場合
昼食1食あたりの現物給与価額:260円
260円×2/3≒173円
※1円未満の端数は、切り捨てます。
・173円未満の自己負担額の場合
→「現物給与額260円-自己負担額」が現物給与額となります。
・173円以上の自己負担額の場合
→現物給与額は0円となります。
社食などで従業員に食事を支給する場合は、この基準を考慮して、従業員の自己負担額を決定することをお勧めします。
お勤めの事業所の加入している健康保険が「全国健康保険協会」の場合には、上記でご紹介した厚生労働大臣の定める現物給与価額が適用されます。
一方で「健康保険組合」の場合は、規約で別段の定めをすることができます。したがって、健康保険組合に加入している事業所では、現物給与価額が異なる場合があることに留意が必要です。