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作成日:2024/04/30
人材確保のための「防衛的賃上げ」:社員給与への対応策とは


昨今の物価上昇や人手不足の影響を受けて、企業の業績が改善していないにもかかわらず、給与をアップさせざるを得ない、いわゆる「防衛的賃上げ」が中小企業を中心に行われています。この採用時の「防衛的賃上げ」によって、新人と既存従業員との間での給与の逆転(不均衡・不公平)が起こる場合があります。この「給与の逆転現象」は、既存従業員のモチベーション低下、中核人材の離職など、さらに深刻な問題にも繋がりかねません。企業はこの問題に、どのように対応したらよいのでしょうか。

 

“防衛的”賃上げとは?


「防衛的賃上げ」とは、物価上昇や人手不足の影響を受けて、業績が改善していないにもかかわらず、人材確保のためにやむを得ず実施される賃上げのことを言います。

(これに対して、業績の改善に伴う賃上げは「前向きな賃上げ」等と言われます。)

 

日本商工会議所が、20242月に会員企業(中小企業が中心)に行った調査「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」によると、「2024年度に賃上げを実施予定」とする企業は「61.3%」と、全体の6割超となりました(昨年度から3.1%増加)(1)


1 2024年度の賃上げ、防衛的賃上げ【全体集計】(日本商工会議所)

このうち、「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定(防衛的な賃上げ)」とした企業は、60.3%となりました。業種別では、特に「介護・看護業」で防衛的な賃上げの割合が高くなっています。

防衛的賃上げを実施した理由には、8割近い企業が「人材の確保・採用」(76.7%)を挙げ、続いて「物価上昇への対応」(61.0%)、「世間相場(同業他社等)への対応」(37.6%)となりました(表2)。



                 表2 業績の改善が見られない中でも賃上げを実施する理由(日本商工会議所)

「防衛的賃上げ」の具体例と、その弊害


業績の改善がみられない中で、企業がやむを得ず実施する「防衛的賃上げ」について、具体例を挙げて見てみましょう(表3)。 左のような賃金テーブルを用いている会社において、1 等級の新規従業員募集の給与を、3万円アップするとします。その際、他の等級の給与もアップさせなければ、右のように「新人と既存従業員の給与が逆転する」現象が生じます。

     
                           表3 給与逆転の事例

 

このように、急な初任給の引き上げは、それまでに入社した(主に若手の)既存従業員との給与水準の「逆転現象」を招いてしまう場合があります。これは「自分よりも新人の方が給与が高いのか…」等といった、既存従業員のモチベーション低下、ひいては人材の流出にも繋がりかねない、大変な問題です。

もし、全員の給与を一律に3 万円上昇させること(いわゆるベースアップ)ができれば、給与逆転の問題は生じません。しかし、そうすると全体の人件費が一気に上昇することになります。では、賃上げの原資がなく、全員の給与アップが難しい会社の場合は、どうしたらよいのでしょうか。

 

「防衛的賃上げ」への対応策

 

対応策@ 給与体系の変更

例えば「最初の給与を高くするが、その後、数年は昇給しない」といった給与体系に変更し、人件費を抑えるという方法が考えられます。しかし、その場合は「昇給しない期間が長くなる」という問題が発生します。この期間の、従業員のモチベーション低下や、人材の流出を防ぐために、何かしらの対策をしなければならないでしょう。

 

対応策A 業績に連動した給与で差をつける

2 年目以降は業績連動の賞与や歩合給が支給されるようにする」などの対策も考えられます。個人業績が数値化しにくい業種の場合は、勤続年数、業務の習熟度に応じて賞与に乗じる係数を変化させるなどして差をつけていく方法も考えられます。

 

対応策B 高すぎる給与を見直す

中途採用で、前職での給与水準に合わせて、入社当初から高すぎる給与を設定してしまった従業員や、明らかに現在の仕事ぶりに見合っていない高給を支給している従業員の給与を見直すことも、検討の余地があるでしょう。

しかしながら、給与の見直しは従業員からの大きな反発が起きる可能性が高いため、客観的な根拠を持ってその理由を説明し、従業員の理解を得る必要があるでしょう。また、「どんな成果を出せば給与が下がらないか」を示し、一定期間の猶予を与えるなどの配慮も検討しましょう。

 

対応策C 勤務時間を見直す

多様な働き方が求められる昨今では、従業員と合意の上で、給与を据え置いたまま、所定労働時間を週40 時間から週35 時間労働に削減し、実質的に賃金をアップさせるという選択肢も検討できるかもしれません。ただし、労働時間が少なくなる分、業務の効率化や業務分担の見直しが必要となるでしょう。

 

おわりに


厳しい経営状況の中で、人材確保のため、やむを得ず「防衛的賃上げ」に踏み切る中小企業が増えています。しかし、場合によっては「給与の逆転現象」などの弊害が起こりうるため、注意が必要です。賃上げとあわせて、既存従業員の給与とのバランス、従業員のモチベーションの維持、人材流出を防ぐための取り組み等についても検討していく必要がありそうです。中小企業の採用、人事制度の設計、見直しについては、是非「みらいく」にご相談下さい。

 


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