作成日:2024/03/19
2024年4月 労働条件明示ルール改正:法令遵守とトラブル回避のために
先日、厚生労働省から発表された「令和4年労働基準監督年報」によると労働条件の明示に関する違反は、定期監督等実施事業場142,611件のうち13,853件となっており依然として多くの企業で発生しています。
働き方改革やコンプライアンス意識の高まりを受け、労働条件の明示は企業にとってますます重要になっています。2024年4月には、有期契約労働者の無期転換ルールの見直しと、多様な正社員の雇用ルールの明確化のために労働条件明示ルールが改正されます。今回は、ルール改正についてまとめました。
労働条件明示とは
労働条件明示とは、使用者(会社)が労働者(従業員)に対して、労働契約の内容を明確に伝えることを指します。具体的には、賃金、労働時間、休憩時間、休日、退職金などの労働条件を書面で交付し、労働者が内容を理解できるように説明する必要があります。
労働条件明示の主な目的
✔労働者と使用者間のトラブルを防止する
✔労働者が自身の権利を理解し、適切な労働条件で働けるようにする
✔労働基準法などの法令遵守を徹底する
一方で労働条件の明示違反として、以下のような事例があります。
ex.賃金、労働時間、休憩時間などの基本的な労働条件を明示していない
ex.休暇や退職金などの付加的な労働条件を明示していない
ex.労働条件通知書を交付していない
ex.労働条件通知書の内容と実際の労働条件が異なる
労働条件明示は、労働基準法第15条で義務付けられており、違反した場合には30万円以下の罰金が科せられます。これは、労働者が安心して働ける環境を整備し、労働条件に関するトラブルを防ぐためです。これらのような違反とならないよう、今回の改正内容をしっかり把握しておく必要があります。
労働条件明示のルール、4つの改正ポイント
(出典:厚労省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」)
2024年4月から、労働条件明示のルールが改正され次の4項目が追加されます。
1.従事すべき業務の変更の範囲
将来的に想定される配置転換などによる就業場所や業務内容の変更の範囲を明示
2.有期労働契約の更新上限の有無と内容
有期労働契約の場合、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示
3.無期転換申込機会の明示
無期転換申込権の発生時期、申込方法、申込先などを明示
4.無期転換後の労働条件の明示
無期転換後の労働条件(賃金、労働時間、休暇など)を明示
企業がルール改正に対応するために、以下のことを行い備えておきましょう。
◇労働条件通知書の内容を更新し、新しい項目を追加する
◇労働条件通知書を雇用開始前に交付する体制を整える
◇従業員説明会などを開催し、改正内容を従業員に周知する
◇社内体制を整備し、法令遵守を徹底する
まとめ
労働条件の明示ルール改正は、労働者と企業間の信頼関係を築くための重要な基盤です。法令遵守と意識改革を通じて、労働条件の明示が徹底されるよう社会全体で取り組んでいく必要があるでしょう。
参考URL:厚労省「
令和4年労働基準監督年報」
参考URL:厚労省「
令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
参照URL:厚労省「
有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」